【フェルトン・ロード】
フェルトン･ロードは1991年にステュワート･エルムズがセントラル･オタゴのバノックバーン地区にエルムズ･ヴィンヤードを興したことから始まった。1996年、ブルゴーニュのラルロ、ナパのルナ、オレゴンのソコール・ブロッサーなどで研鑽を積んだ若き天才醸造家、ブレア・ウォルターが参画。初リリースとなった1997年のピノ・ノワールで衝撃的デビューを飾る。
1999年ワインアドヴォケイト（4月23日号）でロバート・パーカーはフェルトン・ロードのピノ・ノワール・バノックバーン1997をテイスティングしてこう称賛した。
「非常に複雑で豊潤な香り。美しく広大なピノ・ノワールで、ブルゴーニュの一流の赤ワインのようだ。ブルゴーニュ・グラン・クリュのブラインド・テイスティングで十分に替え玉として通用する。フェルトン・ロードがこれだけ高品質のピノ・ノワールを生産できるのなら、ニュージーランドの他のワイナリーも同様のピノ・ノワールを造るのは時間の問題であろう」
この時パーカーはピノ・ノワール・バノックバーン1997に91点。ピノ・ノワール・ブロック3 1997に92点を付けた。
ちなみ「パーカーズ・ワイン・バイヤーズガイド（第7版）」でニュージーランドの5つ星生産者はフェルトン・ロード、アタ・ランギ、リッポン・ヴィンヤード、ペガサス・ベイ(白のみ)、テ・マタ・エステート（最上キュヴェのコールレーン）の5社だけである。
2000年、フェルトン・ロードの愛飲者だった英国のナイジェル・グリーニング（現フェルトン・ロード・オーナー）がエルムズからワイナリーを購入し、醸造家ブレア･ウォルター、栽培責任者ギャレス･キングらとともに新たなスタートを切った。新生フェルトン・ロードの評価は止まることを知らずワインスペクテーター、デキャンターなどの専門誌からニュージーランド最上のピノ・ノワールと称賛される。またシャルドネ、リースリングで造られる白ワインもニュージーランドのトップワインと評されている。近年フェルトン・ロードに関する専門誌の高評価は枚挙にいとまがない。
【フェルトン・ロードの畑】
ワイナリーの位置するセントラル・オタゴのバノックバーンは南緯45度の世界最南端のワイン産地。夏は日中暑く、夜は涼しい昼夜の寒暖差が大きい場所。秋は乾燥し、降雨量は少ない。ブルゴーニュと同じ大陸性気候である。またバノックバーン地区はオタゴの中でも栽培シーズン中、もっとも気温が上昇し、他の地区よりブドウの熟度が高いことで知られる。現在フェルトン･ロードは4つの畑からワインを産んでいる。
エルムズ（14.4ha)：ワイナリーに隣接している最重要畑。栽培されている半分はピノ・ノワールで、残りの半分がシャルドネとリースリング。畑は微細に13ブロックに分けられている。その中でもブロック3とブロック5は最上のピノ・ノワールの区画で、「ブロック3」「ブロック5」という単一区画のキュヴェが造られている。ブルゴーニュで言えばモノポールのグランクリュと言ったところか。生産量は少なく入手困難なキュヴェとして知られる。
コーニッシュ･ポイント（7.6ha)：クルタ川とカワラウ川が交差する川辺の突端にある畑。湖に近いことから霜害が少ない。この畑も25ブロックに微細に分けられている。ほとんどがピノ･ノワールでシャルドネも少量栽培されている。コーニッシュ・ポイント単一のピノ・ノワールのキュヴェが造られている。
カルヴァート(4.6ha)：オーウェン・カルヴァートが興した畑で、エルムズから1キロ東に位置する。ほとんどがピノ・ノワールで少量シャルドネとリースリングが栽培されている。カルヴァート単一のピノ・ノワールのキュヴェが造られている。
マクミュアー（5.1ha）：エルムズ・ヴィンヤードの東1キロに位置し、元々カルヴァートの⼀部で、2001年からフェルトン・ロードが栽培管理を行っている。2010年にフェルトン・ロードがカルヴァートから5.1haを購入した。近い将来、単一畑としてワインをリリースする予定。
畑は全てビオディナミで栽培され、自然酵母による発酵。また醸造所は果汁やワインに過度なストレスをかけないように重力を利用した設計になっている。合理性を追求しながら人的介入を最小限に抑えている。
20年足らずでニュージーランドの枠に留まらず世界的に注目されるワイナリーになったフェルトン・ロード。ブルゴーニュファンはぜひとも珠玉の一献をお試しあれ。
【ピノ・ノワール・カルヴァート】
カルヴァートの畑のみで造られる単一キュヴェ。カルヴァ―ト・ヴィンヤードはエルムズ・ヴィンヤードから1キロ東に位置する畑。現在LVMHが所有者となったが、今も栽培管理はフェルトン・ロードが引き続き行っている。きめ細やかなテクスチャーと凝縮感ある果実味を産む畑。さらにエレガントでバランスがいいのがこの畑の特徴。
2014年は3月20日～4月8日に収穫が行われた。圧搾後、重力により果汁を発酵タンクへ移動。自然酵母による発酵（75％除梗し、25％全房）。ポンピングオーバーは行わない。仏産のブルゴーニュの樽で13カ月熟成（新樽率不明だが多分25％）。無清澄、無濾過でビン詰め。芳香でエレガントな香りが印象的で、美しく洗練された果実味に魅了されるキュヴェ。
ワインスペクテーターがテイスティングした2014年産ニュージーランド全ワイン（442本）の中で1位がフェルトン・ロードのコーニッシュ・ポイント（95点）、2位がこのカルヴァート（94点）であった。赤／ニュージーランド
★ワインスペクテーター 94点
飲み頃：2016～2026年
Plush and elegant, offering wild strawberry and raspberry flavors, with plenty of precision to the white pepper and fresh earth notes. Fresh and vibrant, showing intensity on the finish. Drink now through 2026. (Wine Spectator Issue Sep 30,2016）
★ワインアドヴォケイト 91点
飲み頃：2016～2022年
Pale ruby-purple colored, the 2014 Pinot Noir Calvert has pronounced, youthful aromas of Bing cherries, black raspberries and mulberries with hints of earth, menthol and sage. Medium-bodied, elegant, fresh and lively on the palate, it offers layers of bramble berry and earthy flavors, finishing with good length and chewy texture. (Wine Advocate #222 Dec 2015）
▲ワインスペクテーター 2014年産ニュージーランドワイン442本中、1位.2位をフェルトン・ロードのピノ・ノワールとなった。
