【アンリ・エ・ジル・ビュイッソン】
ムルソーの西側に位置するコート・ド・ボーヌの奥座敷、サン・ロマン。そのサン・ロマンで12世紀から続く老舗ドメーヌがアンリ・エ・ジル・ビュイッソン。1950年代、6代目のアンリ・ビュイッソンは、ほとんどの農家がバルクで販売をしていた中、自家詰め販売を開始。70年代農薬使用が当たり前だった時代に除草剤さえ使わなかった造り手だった。その意思は孫であり現在の当主フレデリックとフランク兄弟に受け継がれている。フランクはドメーヌ・ルフレーヴで働きビオディナミを学んだ経験を生かし、ビュイッソンはビオロジックからビオディナミへと進化していった。
ムルソーから山間部に入ったサン・ロマンはコート・ド・ボーヌで最も標高が高く350~420mに位置する。複数の谷が向き合う複雑な地形で区画毎にテロワールの違いがはっきりと出る。冷涼でミネラルの表現に向く隠れた名醸地。サン・ロマンもブルゴーニュの他の村と同様に相続による所有畑の細分化が進んでいる。そんな中、ビュイッソン家は1ha以上の大きな一枚畑を所有している。色々な区画をブレンドしてサン・ロマンを造る生産者が多い中で、彼等は全て区画名付きのキュヴェでリリースしている。格付け畑を持たないサン・ロマンの畑だが彼等のワインは格付けワイン以上の個性を持っている。サン・ロマンの面白さは複雑な土壌と入り組んだ丘による区画ごとの個性。それを感じさせるのがビュイッソンのワインである。
【サン・ロマン・ブラン・アブソリュ】
ビュイッソン兄弟は2004年からSO2無添加のキュヴェを実験的に造り始めた。最初は一般に販売するつもりは無かったという。当時のブルゴーニュではSO2無添加のワインはまだ異質なものだったからだ。しかし、実験的醸造を重ねるうちにSO2無添加キュヴェこそ本来ブルゴーニュワインが持つ味わいを表現出来るのでは無いかと考える様になった。そして2011年に初めてSO2無添加キュヴェをリリースした。初ヴィンテージのリリースは600本だったが、話題を呼びは一瞬にして完売となった。国内外から高い評価を受け、今や彼等を代表するキュヴェになった。
「アブソリュと名付けられたSO2無添加キュヴェは素晴らしい出来。非常に良くコントロールされていて、欠点が見当たらない。偉大なサン・ロマンだ」と2015年度版【ベタンヌ&ドゥソーヴ】で称賛された。
このアブソリュはサン・ロマン・スー・ラ・ヴェルのブドウを使用。この畑は祖父アンリが植えた樹齢50年以上の古樹。スー・ラ・ヴェルは南向きの急斜面でブドウは非常に良く熟す。50%除梗、軽く破砕。新樽率10%の木樽でアルコール発酵及びマロラクティック発酵を行う。その後約12ヶ月間の熟成。醸造中はSO2無添加。桃のネクターのようなアロマが特徴的で、力強くの骨格の大きい果実味溢れるワイン。リリース直後から香りは開きジューシーな味わいを楽しめる逸品。ラベルにはシリアルナンバーが記載されており、2014年の生産本数は1829本。
*蝋キャップのため多少キャップが欠けている場合がありますのでご了承ください。(写真参照)