【ジャン・バティスト・ブーディエ】
ペルナン・ヴェルジュレスに続くブーディエ家の5代目、ジャン・バティスト・ブーディエ。2015年が初ヴィンテージ。日本では無名の存在だがフランス国内で大人気になっている注目のブルゴーニュ新世代。
ペルナン・ヴェルジュレスはブルゴーニュの中でも保守的な造り手が多いところ。ブーディエ家も代々受け継がれたワイン造りを継承してきた。ジャン・バティストは醸造学校卒業後、ニュージーランドで研修。フランスに戻り、ディジョン大学、ボルドー大学で醸造を学んだ後、DINO(国家醸造士)資格を取得。フランスでの研修先もニコラ・ロシニョール(ブルゴーニュ)、ゴビー(南仏)、ヴュー・テレグラフ(ローヌ)、そして最後がシャトー・オー・ブリオンとまさにエリート。2013年に父親の下で働き、醸造などに関して父に意見するが喧嘩別れとなり、3haの畑を父から譲り受け独立する。
「リヨネル・ゴビーからはSO2を極力使わない醸造法と醸造学では説明できないブドウの生命力を高める術を学んだ。オー・ブリオンでは科学的分析と正確な醸造と管理でブドウの個性を最大限活かすことを学んだ。ペルナン・ヴェルジュレスはテロワールが劣っているのではなく、ワイン造りに対する姿勢が劣っていることに気付いた」とジャン・バティストは言う。
父親の醸造所は使えないので同じ村の友人でもあったボノー・デュ・マルトレイの一部を借り、初めて醸造したのが2015年ヴィンテージだった。その初ヴィンテージのワインをニコラ・ロシニョール、アンヌ・グロ。そして、ヴェッキー・ワッサーマン(ブルゴーニュのカリスマ的ワイン商)が絶賛し話題になりパリで一気に売れてしまった。さらに「ギド・アシェット」にも掲載され、ピエール・ガニェール、ルドワイヤン、ギィ・サヴォワなどの3つ星レストランにもオンリストされた。
現在畑はペルナン・ヴェルジュレスに3ha。サヴィニー・レ・ボーヌ、アロース・コルトン、ショレ・レ・ボーヌに少し。そしてお婆さんの所有だったコルトン・シャルルマーニュが加わった。今では父親も認めてくれて全ての畑を相続することが決まり、醸造所も相続できた。父親はブドウの植え替えをしなかったので、最も古い区画で樹齢80年。その他の区画も平均樹齢50年の古樹が残っているという。栽培はリュット・レゾネを採用。ビオディナミへの切り替えは機を見てゆっくりと考えているという。醸造は毎年、ブドウの状態を見ながら変え、2015年はほぼ除梗したが、2017年からは一部で全房発酵を開始している。ペルナン・ヴェルジュレスに表れたブルゴーニュの新星、ジャン・バティスト・ブーディエ。ブルゴーニュファンは要チェック。
*ヴェッキー・ワッサーマン:1937年ニューヨーク生まれ。1968年からブルゴーニュに移住。1979年にワイン商を設立し当時まだ無名だったブルゴーニュの名ドメーヌを世界に紹介した伝説のワインブローカー。2019年【デキャンター】誌のホール・オブ・フェイムを受賞した。2021年8月20日死去。
【ペルナン・ヴェルジュレス・レ・フィショ・ルージュ】
ペルナン・ヴェルジュレスの1級畑。平地に近いところにピノ・ノワール、斜面にシャルドネが植えられている。ブドウは1950年代に植樹された古樹。1985年の雹害で一部植え替えられたが最高の状態が保たれている。フィショの土壌はテール・ブランシェと呼ばれる石灰土壌で表土は10cmのみという。石灰岩盤のミネラルを強く感じ個性的なピノ・ノワールが育つという。記念すべき初ヴィンテージの2015年。
【試飲】
グラスから芳醇な香りが溢れる。黒い果実というよりは、赤い果実をイメージさせるフルーティーな香り。イメージ通り濃密というより果実のエキスを抽出したかのようなエレガントで旨味のある果実味が口中に広がる。スケールは大きくないが端正な果実味で集中力を感じる旨味。野暮ったいタンニンとは無縁で、ほどよい酸としなやか果実味は冷涼感を感じさせる。抜栓翌日にも飲んだがポテンシャルは落ちていなかった。三つ星レストランが採用したのも肯ける。今度はこのドメーヌの白ワインも飲みたくなった。できるなら近い将来リリースされるであろうコルトン・シャルルマーニュを。ブルゴーニュファンは試してみる価値のある1本。(2020年1月中旬試飲)