【グロF&S】
日本のブルゴーニュファンにはもはや説明不要の人気ドメーヌ、グロ・フレール・エ・スール。ヴォーヌ・ロマネ村を代表する造り手、グロ家。名手ジャン・グロの次男、ベルナール・グロが子供のいなかった叔父夫婦の養子となり、ドメーヌ・グロ・フレール・エ・スールを1980年より引き継いだ。安定した品質でグロファミリーの中でも繊細でありながら一番しっかりとした味わいのワインを造ることで定評があります。兄のミシェル・グロより力強い味わいに仕上がっている。
2016年ヴィンテージよりベルナール・グロは一線を退き、息子のヴァンサン・グロが醸造を担当。ベルナールは必要最小限のSO2を使用し、除梗を行っていたが、2016年からヴァンサンはSO2無添加、一部の全房発酵を行っている。SO2無添加や全房発酵の比率などはヴィンテージによって異なる。ヴァンサンはテロワールを最大限に表現するために臨機応変に対処するという。ラベルもリニューアルし、さらなる深化を深めるグロF&Sである。
【シュマン・デ・モワンヌ・ド・ヴェルジ】
2017年が初ヴィンテージとなるグロF&Sの新キュヴェ。「修道士の道」と名付けられたこの畑はベルナールが90年代初頭に購入した土地。場所はラ・ターシュから歩いて500メートル上がった所にある。昔の航空写真を見たベルナールがかつてこの地が、石垣で囲まれていた(クロがあった)ことを発見。フィロキセラに侵される前はここに畑があったと確信した。ここに畑を作れば素晴らしいワインが生まれるはずだと、ベルナールは土地を購入し開墾を始め、2014年に待望の植樹を行った。11世紀修道士達がシャトー・ド・クロ・ド・ヴージョに向かう際にこの場所を通っていたことからこの畑名になった。アペラシオンがない場所なのでヴァン・ド・フランス(テーブルワイン)としてリリースとなった。土壌は粘土石灰質。詳しい平均樹齢は分からないが、若木がほとんどなので、まさにこれからの畑だろう。コンクリートタンクで発酵後、新樽100%で12カ月熟成。満を持してリリースされたグロF&Sの新たなモノポールワイン。ぜひともお試しあれ。赤/VDF
【2017年ヴィンテージの試飲】
グラスからは甘く熟した黒い果実の香り、ミントなどの清涼感あるハーブの香りも感じられる。ピュアでエレガントな果実味が優美に口中に広がる。このしなやかさは意外だった。もっとインパクトのある果実味を想像していたからだ。だがアフターは長くこのワインのポテンシャルの高さを感じる。今飲んでも楽しめるが、もう少し寝かせてから飲んでみたい。というのは翌日このワインを飲んでみると、味に深みが増していたからだ。まだこのワイン(畑)は蕾なのかもしれない。個人的な好みでは抜栓直後より、翌日のほうが美味しく感じられた。誤解を恐れずに言えば、エレガントな果実味はヴォルネーを想起させた。この畑が植樹されたのは2014年だから、樹齢は10~15年くらいの若木が主体だろう。この味わいは若木によるものなのか、それともこれがこの畑のテロワールなのかわからないが、毎年試飲してみたくなった。グロF&Sを好きな人は試してみる価値はあるだろう。この地を選んだベルナール・グロの審美眼は正しかったのか、5~6年後には答えが出るだろう。(2019年10月上旬試飲)