ワインのドキュメンタリー映画「モンドヴィーノ」(2005年)で登場し話題となったヴォルネーの名ドメーヌ、モンティーユ。ワイン造りの歴史は1920年代から始まる。先代のユベール・モンティーユはディジョンでの弁護士が本業だった。よって1947年にドメーヌを相続した時、ブドウ畑の面積はわずか3haしかなかった。その後、息子のエティエンヌとともにブドウ畑を拡張し、1990年代には7haを超えるまでに広がった。
エティエンヌもパリで会計士として働いていたが、2001年にブルゴーニュに戻り、シャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェの経営に就くと同時に、ドメーヌ・ド・モンティーユの当主となった。エティエンヌ自身は1983年からドメーヌのワイン造りに関与しており、1995年には実質的にドメーヌの主導権を握り、ブドウ栽培をビオロジックへと転換。父から子への継承は着々と進んでいた。
エティエンヌがフルタイムで経営にあたるようになってからドメーヌは版図拡大し一気に飛躍していく。1993年にはすでに、ピュリニー・モンラッシェ1級畑カイユレをジャン・シャルトロンから買い取っていたが、2004年にボーヌ1級畑エーグロ(白)、特級コルトン・クロ・デュ・ロワ、コルトン・シャルルマーニュを入手。
2005年にドメーヌ・デュジャックと共同でトマ・モワイヤールを買収し、コート・ド・ニュイにも進出。この時にヴォーヌ・ロマネ1級畑マルコンソール、ニュイ・サン・ジョルジュ1級畑オー・トレイ、特級畑クロ・ド・ヴージョを取得した。
さらに2012年、エティエンヌが経営を任されていたシャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェをオーナーの金融機関から買い取った。ただし、シャトーが所有していた特級畑のモンラッシェとバタール・モンラッシェは、この買収に協力したシャトー・ラトゥールのフランソワ・ピノーに譲ることになった。よって2017年からは、シャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェとして生産されていたワインは、全てドメーヌ・ド・モンティーユとなった。また記憶に新しいところでは2019年から北海道でのワイン造りも本格的にスタートし、自社畑での初ヴィンテージは2023年で2025年にリリースを予定している。
ユベール・モンティーユ時代から長熟で知られたワインだったが、その反面飲み頃になるまでに時間がかかると言われていた。エティエンヌに世代交代してから若いうちから香り高く、そしてタンニンもしなやかなものとなり、かつ長期熟成にも十分耐え得るポテンシャルの高いワインへと変化していった。全房を用いた醸造など、基本的にはユベール時代の様式を継承しながらも、より完熟したブドウを摘み取り、抽出の仕方や発酵温度の管理をより綿密に行うことで、現在のスタイルを築いたのであった。ヴォルネーの知る人ぞ知る名ドメーヌから、今やブルゴーニュを代表する指折りの名ドメーヌとなった。
【ドメーヌ・ド・モンティーユの2017年ヴィンテージ】
2017年ヴィンテージは非常にトリッキーな春から始まった。霜の被害を受けた2016年とは異なり、斜面のブドウ畑は霜に耐えた。主に白ブドウの畑で被害を受けた。2017年の春は、低地の区画に寒さが集中したため、大半のブドウ栽培者がACブルゴーニュ、あるいはアリゴテの区画が被害を受けた。だがこの損失は、村名や1級畑のブドウが失われるのに比べれば許容範囲であった。
2017年の赤は、ラズベリーやイチゴ、サワーチェリーなどの赤い果実の香りがあり、果実のフレッシュさが際立っている。口当たりは豊かで優美。歯ごたえのある果実味とバランスのいい酸を感じる。タンニンは非常によく溶け込んでおり、2010年や2002年のヴィンテージに匹敵する軽やかなテクスチャーとシルキーさを持っている。果実味がワインの骨格をバランスがよく支え、多くのキュヴェで全房率を高くすることができた。2017年の赤は特別なヴィンテージとなった。稀有なタンニンにより若いうちから心地よく味わうことができ、10年以上熟成した場合はさらに素晴らしくなるだろう。
ワインアドヴォケイトでは2017年のモンティーユをこう評している。
「2017年ヴィンテージはドメーヌ・ド・モンティーユにとって成功の年である。醸造責任者のブライアン・シーヴは、表情豊かな果実味で緻密なワイン造り、繊細でありながら骨太なポートフォリオを作り出した」
【ヴォーヌ・ロマネ・オー・マルコンソール】
プルミエ・クリュであるがドメーヌのフラグシップと言って過言ではないだろう。畑はラ・ターシュに隣接した「限りなくグラン・クリュに近いプルミエ・クリュ」。ラ・ターシュと双子のように並び地質的にも味わいもラ・ターシュに似ていることから「プティ・ラ・ターシュ」とも言われている。芳香で複雑なアロマは途方もなく素晴らしい。シルクのようなタンニンと深遠な果実味で無限の旨味が空気のように広がっていく美酒。その中でも最高峰のマルコンソールとして定評があるのが、デュジャック、シルヴァン・カティアール、そしてモンティーユの御三家だろう。
モンティーユは2005年にデュジャックと共同でトマ・モワイヤールからこの畑を取得した。畑は3か所に分割してあり所有する総面積は1.38ha。2種類のマルコンソールを造っている。(以下、下記の図参照)ラ・ターシュに組み込まれたようなA-1の畑からマルコンソール・クリスチアンヌ。A-2の2つの畑からマルコンソールが造られる。このキュヴェは2つの畑から造れたもの。上級キュヴェのクリスチアンヌの価格は約1.5倍だが、毎回専門誌の評価はそれほどの差がない。
2017 年のマルコンソールは全房率100%のブドウで、新樽率50%で熟成された。早いうちからも楽しめ、優に20年以上熟成可能のポテンシャルを持った稀有な仕上がりとなった。
ニール・マーティン(元ワインアドヴォケイトのブルゴーニュ担当。現在ヴィノスの副編集長)は2017年のマルコンソールをこう評をしている。
「ミディアムボディでタンニンは濃く、やや噛み応えがあり、グリップ感があり、主張の強いスタイル。しかし、見事なバランスを保ち、魅力的。軽くスパイスの効いたフィニッシュがスタイリッシュに広がっていく。素晴らしい」
またワインアドヴォケイトではこう評している。
「2017 年のマルコンソールは美しい。カシス、牡丹、オレンジの皮、ダーク・ベリーの果実のアロマがグラスから立ち昇る。味わいはミディアムからフルボディで、しなやかで(果実の)肉付きが良く、ヴィンテージの魅力に関わらず、(ワインの)核に真の深みと凝縮感がある。フィニッシュは長く、(旨味が)染み込んでいく」
★ヴィノス 92~94点
飲み頃:2022~2045年
The 2017 Vosne-Romanée Les Malconsorts 1er Cru is entirely whole cluster fruit matured in 50% new oak. It has a backward and reticent bouquet, yet one can tell there are coiled up black fruit here, mixed with raspberry coulis and mulberry scents. The palate is medium-bodied with dense, slightly chewy tannin at first, grippy and assertive in style. Yet it manages to retain admirable balance with an engaging, quite saline, lightly spiced finish that fans out with style. Excellent.(Neal Martin【Vinous】 10th Jan, 2019)
★ワインアドヴォケイト 93点+
飲み頃:2025~2050年
The 2017 Vosne-Romanée 1er Cru Les Malconsorts is also showing beautifully, soaring from the glass with aromas of cassis, peonies, orange rind and dark berry fruit, with little hint of the tertiary complexity to come. On the palate, it's medium to full-bodied, supple and fleshy, but it has real depth and concentration at the core too, despite the charm of the vintage. The finish is long and penetrating. (Wine Advocate Issue 14th Feb 2020)


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