【フィリップ・パカレ】
日本でビオワインの造り手として最も有名で人気のあるフィリップ・パカレ。1991年「プリューレ・ロック」の醸造責任者に就任後、2000年、パカレは自らのドメーヌを設立するために「プリューレ・ロック」を退社。その時、ロマネ・コンティから醸造長のオファーを受けるも、辞退。そして数年後、待望の初ヴィンテージ2001年でセンセーショナルなデビューを飾る。発酵時に酸化硫黄無添加、酵母はすべて天然酵母を使用し、酵母を殺してしまうとされる化学肥料、農薬や除草剤は全く使用しない。出来上がるワインはピュアな果実味溢れる至極の一献となる。
【2021年のブルゴーニュに関して】
2021年のブルゴーニュは霜、雹、病害により、生産量が30%~80%減少し歴史的な低収量となった。2018年、2019年、2020年と暑く乾燥した夏と違い、雨が多く比較的冷涼な夏であったため、2021年は前3ヴィンテージのようなフルボディのワインではなく、バランスよくエレガントで繊細なストラクチャーを持ったクラシックなブルゴーニュとなった。ヴィノスのニール・マーティンは「2018年からブルゴーニュを飲み始めた人がこの2021年をブラインドで試飲したら違う産地のワインだと思うだろう」と評したほど。逆に近年のブルゴーニュに違和感を覚えた人には往年のブルゴーニュを想起させるヴィンテージとなるかもしれない。
ワインアドヴォケイトの記事で2021年ブルゴーニュの赤ワインに関して興味深い記事があったので要約し抜粋してみる。
「偉大なヴィンテージとは何だろう? 19世紀後半から21世紀初頭にかけて、偉大なブルゴーニュの赤ワインの定義は、比較的熟度が高く、時間を超えて熟成させるためのストラクチャーとエキスをたっぷりと含んだ力強いワインだった。今日そのようなヴィンテージがこれほど豊富になったことはかつてなかった。2018年、2019年、2020年と3年連続で豊作に恵まれている。矛盾しているのは、偉大なヴィンテージとされていたものが一般的になるにつれ、ゴールポストが変わってきているということだ。熟成に何年もかかるワインは、10年に一度よりもはるかに頻繁に生産されている。では今日の偉大な赤ワインのヴィンテージとは何だろう?
ブルゴーニュの2021年ヴィンテージはその疑問に適切に答えているかもしれない。コート・ドールのあちこちで、生産者たちは誇大宣伝する必要のないこのヴィンテージについて狂喜乱舞していた。シャサーニュ・モンラッシェのティエリー・ピヨ(ポール・ピヨ)は「2021年は往年のブルゴーニュを思い出させ、私がいつも造りたいと夢見ていたワインである」と語った。ベルトラン・デュガ(クロード・デュガ)は「このヴィンテージは新鮮な空気の息吹のようなものでした。それは私を目覚めさせ、新たなエネルギーを与えてくれた」と。セシル・トランブレイは「2021年はついにピノ・ノワールへの回帰となる」と。ジャック・フレデリック・ミュニエは「これらは私が飲みたいワインです」と簡潔に言い表した。
ではこれらのワインは一体どのようなものなのか? もしあなたのブルゴーニュの理想が2018年のように自然がもたらした豊かで、太陽の光を浴びて、筋肉質のワインであるならば、2021年はあなたにとってのヴィンテージではない。2021年の赤はしなやかで肉厚で芳香。低収量の濃縮度と驚くほど良好なフェノールの成熟度が、冷涼なヴィンテージの活気に満ちた芳香のワインとなっている。開放的でチャーミングだ。閉じこもることはないだろう。近年の中では香り高い2017年が最も近いかもしれないが、2000年ヴィンテージをよりクリーンで、より濃縮したバージョンと例えるのが適切だろう。100年は持たないかもしれないが、最高の2000年が20年間優雅に熟成したとすれば、より慎重に選別され低収量のブドウから造られた2021年は、少なくとも同じくらい長くセラーで熟成できるだろう」(ワインアドヴォケイト2023年2月1日号)
そしてパカレ自らこの2021年をこう語っている。
「収穫量は全体的に異常なほどに少なくなってしまいました。霜の影響を最も受けた畑ではワインを造る事を諦めるほどでした。モストのアロマ成分は非常に充実していて、偉大なワインになる大きな可能性をもっていました。発酵のダイナミクスも良好。また糖分と酸のバランスは正にブルゴーニュワインの愛好家から高く評価されるであろう理想的な状態でした。ブルゴーニュにとって2021年はかなり古典的なヴィンテージです。前年に比べ、より涼しい気象条件下でブドウは熟成し、特徴としては2016 年と2017 年ヴィンテージの間とも言えるでしょう。
赤ワインのアルコール度数平均12.5%に収まっています。これもブルゴーニュ的ヴィンテージと言える証でしょう。華やかな色合い、綺麗なアロマ、そしてジューシーで品のあるヴィンテージとなりました。非常に満足しています」
最後にブルゴーニュのあるバイヤーのコメントを紹介しておく。
「ブルゴーニュの2021年はどうですか?と聞かれたら。エレガントで果実のエキスが染み渡るようなクラシックなブルゴーニュが好きな人にはお勧めのヴィンテージです。問題があるとすれば高騰した価格と生産量が少ないので見つけることができるかということ。もし市場でお目当てのワインを見つけたらすぐにキープしておきましょう。ただし財布と相談して」
【ヴォーヌ・ロマネ・レ・ショーム】
ラ・ターシュのはす向かい、オー・マルコンソールの下に位置するレ・ショーム。平均樹齢60年古樹。香水を思わせるエキゾチックで妖艶な香りにフレッシュなバラのニュアンスが加わり、非常に繊細かつ優美なワイン。端正で濃密な果実味、長い余韻はグラン・クリュに迫るほどの風格を感じるほど。まさに魅惑の一品。インポーターへの入荷24本。赤/1級畑