【ベッサン・トランブレイ】
シャブリの名手、ジャン・クロード・ベッサン。彼がシャブリでワイン造りを始めたのは1989年。自身は建築家を目指していたが、妻の実家のトランブレイ家に跡取りがなく、そのブドウ畑を受け継ぐことになった。その後、ドメーヌ名には息子ロマンの名が加わり、2016年頃からジャン・クロード・エ・ロマン・ベッサンとなった。2022年ジャン・クロード・ベッサンは正式に引退し、息子ロマンにその座を譲り、2020年ヴィンテージからドメーヌ名はベッサン・トランブレイとなった。(元々大部分の畑がジャン・クロードの妻エヴリンヌの実家であるトランブレイ家の所有だった。その畑を2021年に正式に相続したため)。
現在所有するブドウ畑は12ha。シャブリ(スタンダードと樹齢45〜55年の「ヴィエイユ・ヴィーニュ」の2種類)、1級モンマン、ラ・フォレ、フルショーム(スタンダードと「ラ・ピエス・オー・コント」の2種類)、特級ヴァルミュールの5アペラシオンから7種類のワインを造っている。
ワインの醸造はヴィンテージとアペラシオンに応じて、ステンレスタンクと小樽を使い分けている。ジャン・クロードの目指すワインのスタイルは「フィネス、フローラルさ、ミネラル感」。実際どのキュヴェもシャブリのエッセンスが詰まった、フローラルな香りとミネラルを感じさせるワイン。和食や寿司には抜群の相性。
近年このドメーヌの評価はうなぎのぼりで、今まさに大ブレイク前夜の様相である。シャブリの2大巨頭、ラヴノー、ドーヴィサに匹敵する評価である。ワインアドヴォケイトでこう称賛されている。
「何度も書いているが、このドメーヌはもっと語られるべき存在でシャブリのトップ6に入るドメーヌの一つである。ベッサンはシャブリの酸味と緊張感を愛し、それをワインにて表現するという哲学で、切れ味と凝縮感、質感、立体感を備えたワインを見事に実践している。偉大なシャブリに求められるすべての要素を備えている」(ワインアドヴォケイト2022年7月22日号)
そしてフランスで最も影響力のあるワインガイド「ル・ギド・デ・メイユール・ヴァン・ド・フランス2023年度版」が2023年9月に発売され、ベッサン・トランブレイ(ブルゴーニュ)、ピション・ラランド(ボルドー)、ドメーヌ・ド・モンティーユ(ブルゴーニュ)、フィリポナ(シャンパーニュ)、マルク・クライデンヴァイス(アルザス)など12生産者が3つ星に昇格された。
【2021年に関して】
ベッサン・トランブレイの2021年はクラシックなスタイルとなったが、収量は例年の半分以下と激減した。そのためプルミエ・クリュのラ・フォレはモンマンに、フルショーム・ピエス・オー・コントはフルショームにブレンドされた。スタンダードなシャブリの生産はなく、シャブリ・ヴィエイユ・ヴィーニュのみとなり、造られたのは4つのキュヴェのみとなった。
ワインアドヴォケイトのシャブリのレポートを一部要約すると。
「2021年は霜、病気、悪天候などに悩まされた困難なヴィンテージだったが、状態のいい典型的なシャブリを造り出した。1990年代のシャブリの特徴を再現しながらも、現代的な肉厚な魅力も提示している。皮肉なことに、オーセロワ地区で2021年が素晴らしいヴィンテージだと主張する人は誰もいないだろうが、【シャブリらしいシャブリ】を探している読者は2021年が気に入るだろう」(ワインアドヴォケイト2023年9月8日号)
さらに追記するなら高騰する2021年ヴィンテージにおいて、シャブリのトップ・ドメーヌでありながら、価格はホントに良心的である。他のシャブリのドメーヌと比較したら価格の安さは一目瞭然だ。掛け値なしのお値打ちの逸品。
【シャブリ・プルミエ・クリュ・ラ・フルショーム】
シャブリ最高峰の1級畑と評されるフルショーム。スラン川右岸のグラン・クリュの北側延長上に位置する。通常ドメーヌでは二つのフルショームが造られているが、今回は特別区画の古樹(平均樹齢70年)から造られるキュヴェ、ラ・ピエス・オー・コントは造られず、このキュヴェにブレンドされた。ちなみに通常のフルショームも1959~1971年に植樹された古樹が使用されている。全房圧搾し自然酵母で発酵。古樽で12カ月熟成。白/1級畑
ワインアドヴォケイト評を抜粋すると以下の通り。
「今年はピエス・オー・コントを造られないので、このフルショームにすべてが注ぎ込まれた。この魅力的なワインは、蜂の巣、白い花、牡蠣の殻、オレンジの花、マッチのアロマがグラスの中で広がる。ミディアムからフルボディ、明るくサテンのような滑らかな味わいで、ピュアで精密、キリッとした酸と繊細な蜂蜜のようなフィニッシュを伴う。ビン詰めされたばかりなのでまだ少しシャットダウンしているが、シャブリの本流主義者にとっては魅力的なワインだ」
★ワインアドヴォケイト 93点
飲み頃:2025~2040年
There's no Pièce au Comte this year, so everything went into the 2021 Chablis 1er Cru Fourchaume, an attractive wine that unwinds int he glass with aromas of honeycomb, white flowers, oyster shell, orange blossom and struck match. Medium to full-bodied, bright and satiny, it's pure and precise, with racy acids and a delicately honeyed finish. While it's still a touch shut down after its recent bottling, it will appeal to Chablis purists. (Wine Advocate Issue 8th Sep 2023)



