【ドメーヌ・ド・ラ・シュペット】
ドメーヌ・ド・ラ・シュペットはつい最近まで日本で入手困難だった「幻の有名生産者」。世界の主要ワイン消費国およびフランス全土のレストランやワインショップでは長年大人気を博し、新ヴィンテージのリリースと同時に予約で完売してしまうほど。よって日本への入荷はほとんどなく日本のワインラヴァーには「知らざる銘酒」となっていた。中にはフランスで飲んで旨かったので日本で探したが全く見つからなかったという人もいたという。そのドメーヌ・ド・ラ・シュペットが2017年ヴィンテージから少量だが日本への入荷が始まった。
ドメーヌを所有するギュトラン家はサントネ村に1930年代から続くヴィニュロンの名家。1992年に3代目となるジャン・クリストフ(栽培担当)とフィリップ(醸造担当)の双子の兄弟が継承して、自社ビン詰めを開始した。
ピュリニー・モンラッシェ(1級畑を3つ所有)、シャサーニュ・モンラッシェ(1級畑を1つ所有)、そしてサントネ(1級畑を2つ所有)というコート・ド-ルの大トリを飾るアペラシオンに計13ヘクタールもの畑を所有している。しかも大半が50年以上の古樹ばかり。1992年からリュット・レゾネ(減農薬)栽培を開始した。この3つのAOCは隣接しているが、テロワールはまったく異なっている。よってギュトラン兄弟は、基本的な栽培、醸造方法はもちろん、50%の新樽率や熟成期間まであえて全AOCを一律にすることで、テロワールの違いを鮮明に表現しようとしている。このような試みでテロワールを表現している造り手はブルゴーニュの中でも稀有な存在だ。自然酵母のみで発酵、白は全房発酵、赤は100%除梗。新樽率50%で10カ月間熟成。仕上がったワインは密度の高い果実味でどのキュヴェも完成度の高い逸品。そんな彼らのワインは、40%はフランス国内のレストラン、ワインシップ、個人の顧客、60%は英国、ベルギー、スイス、ドイツなどのEU各国、米国、オーストラリア、中国、日本などに輸出されている。
【2022年のブルゴーニュ】
2022年のブルゴーニュに関してのワインアドヴォケイトのリポートを抜粋して参考に記す。
「2022年ヴィンテージは、ブルゴーニュが驚きを与える能力を失っていないことを証明している。1947年以来最も暑く、最も乾燥したヴィンテージが、どうしてこれほどジューシーで、上品で魅力的なワインを生み出すことができたのだろう? そして、2020年、2019年、2018年のヴィンテージとの共通点がほとんど見られないのはなぜだろう?
明らかなことは2022年もまた非常に力強いブルゴーニュのヴィンテージであり、幅広いスタイルで卓越したワインを提供し、ブルゴーニュの魅力的なテロワールを表現している。近年平均を下回る収穫が続いていたが、2022年の収穫量が比較的「通常の」収量に戻ったことはさらなる恩恵であろう。
早摘みで造られた2022年は、繊細でかわいらしいスタイルを示しているが、中身が少し弱い可能性がある。対照的に、遅く摘まれたワインは、深みがあって筋肉質なものから、明らかに脂肪が多くてジャミーなものまで多岐にわたる。幸いなことに、2022年のほとんどはその2つの中間に位置する。調和がとれていて魅力的で、アルコール度数は12.5%から13.7%で、赤は2017年のおおらかな魅力と2015年の深みが融合したかのようだ。白はもう少し寛大な印象で、2020年ヴィンテージのオープンバージョンと言えよう。言い換えれば、若い時も、成熟した時も、喜びを感じる快楽志向のブルゴーニュだ。
2022年は2020年と比べてより多くの点で対照的だが、2021年とも全く異なる。私は昨年、現代的な雰囲気で、往年のブルゴーニュを思い起こさせる、香り高く官能的な2021年へ最高の賞賛の気持ちを書いた。改めてワインを再試飲してみると、その認識を再確認したが、2021年は一律に全て素晴らしいとはとても言えない。だが、このヴィンテージを見落としたブルゴーニュ純粋主義者はあとで後悔するかもしれない。対照的に、2018年ヴィンテージに代表されるような、パンチの効いた力強いスタイルを好むワイン愛好家には2021年は引き続き必要ないだろう」(ワインアドヴォケイト2024年1月19日号)
【ブルゴーニュ・コート・ドール・ブラン】
ピュリニー・モンラッシェ内のACブルゴーニュ区画「ル・クロ」に0.5ha所有。石が多い石灰質土壌。平均樹齢50年の古樹。樽で発酵後、10カ月間熟成。新樽率50%。様々な果実の豊潤な香りと程よいバター香も楽しめる。このクラスの域を超えたではハイクオリティーのブルゴーニュ・コート・ドール・ブラン(ACブルゴーニュ)。コート・ド・ボーヌの下手な村名ワインを凌駕する小さなモンスターワイン。白/ACブルゴーニュ・コート・ドール・ブラン