数多の名ドメーヌが集結しているジュヴレ・シャンベルタン。一昔前までジュヴレの造り手はみんな仲が悪いと言われていたが、新世代の造り手は仲が良く、意識が高く、情報交換をし、お互いを高めている。そんなジュヴレ新世代のギャング・オブ・フォーともいえるのが、アルノー・モルテ(ドニ・モルテ)、ベルトラン・デュガ(クロード・デュガ)、シリエル・ルソー(アルマン・ルソー)、そしてシャルル・マニャン(アンリ・マニャン)ではないだろうか。前記の3つのドメーヌはブルゴーニュファンなら知らない人はいない名ドメーヌとして先代の時から名を馳せていたが、アンリ・マニャンはほとんど無名のドメーヌ。シャルルの時代になってから、10年前後で世界中のブルゴーニュファンから注目を集める存在となった。まさに彗星のごとく現れたジュヴレのライジングスター。
実はマニャン家は1656年まで遡ることができる老舗の生産者である。EUの個人のワイン愛好家達やワインショップなどからの注文で販売は安定していたために、クオリティーに関しての向上心は希薄だった。実際ワインアドヴォケイトやワインスペクテーターで検索してみると80年代のヴィンテージがテイスティングされているが、評価は低いものだった。パーカーなんてそこまで言うか、と思うほど辛辣な批評を書いていた。特に印象的だったのは「これだけの素晴らしい畑をこのドメーヌが所有しているのは残念である」と。
そうドメーヌはジュヴレの銘醸地を多数所有していたのだ。言ってみれば宝の持ち腐れである。2007年、現当主シャルル・マニャン(1986年生まれ。当時21歳)が参画してからドメーヌは変わり始めた。栽培は実質的なビオ栽培を実践。化学肥料、除草剤、殺虫剤、防腐剤は一切使用しない。そしてボルドー液をはじめ、ビオで認定されている薬剤にも疑問を持っており、ブドウや人体に無害でビオ薬剤よりも環境に配慮したものを使用している。よってビオ認定はしていない。
選果は振動式選果台を2台使用。余分な水分、乾燥果をはじき、未熟な房や果実を取り除き、健全な果実のみを得る徹底ぶり。亜硫酸の添加量も40mg/Lとデメテール(ビオの認定団体)の赤ワインの上限の半分という少なさ。醸造所の清掃の徹底でバクテリアなどの繁殖を防いでいる。
またマサルセレクションで入手したピノ・ノワール・マニャン(Pinot Noir Magnien)と呼ばれる独自のクローンを使用している。そのクローンは友人でもある、ベルトラン・デュガ(クロード・デュガ)、アルノー・モルテ(ドニ・モルテ)のドメーヌでも使用されているという。
シャルル曰く「ピノ・ノワールという品種ならではの繊細で薫り高いワインづくりを目指しています。それは気品があり絹のようになめらかなタンニンを伴い、まろやかでバランスの良いワイン」「今の時代、私のワインを30年以上寝かせて飲む人は少ないだろう。ならば30年間いつでも飲む人に喜びを与える味わいを表現したい」と。
そんな彼のワインは、フランスはもとより各国のブルゴーニュ・ラヴァーから注目を集める。2017年フランスのブルゴーニュマニアや全世界のワインバイヤーが一目置く、ブルゴーニュワインの専門誌「Bourgogne Aujourd'hui」で、シャルル・マニャンが【今年のブルゴーニュの星】に選ばれた。さらにジュヴレ・シャンベルタンの組合ODG(Organisme de Défense etnde Gestion)のヴィラージュとプルミエ・クリュ部門の会長に就任。
そして翌年(2018年)、2015年ヴィンテージがワインドアドヴォケイトで28年振りに取り上げられ高評価得る。長い歴史があるにも関わらず、ワインアドヴォケイトでは「このエキサイティングな新興ドメーヌをみんなに知ってもらいたい」と評したほど。まさにジュヴレのライジングスター。そんな彼のワインはのどを潤すような優しさとナチュラルな果実の甘味と深さを感じる美酒。ブルゴーニュファンはぜひとも試してほしい注目の一献。
アンリ・マニャンの2022年ヴィンテージをワインアドヴォケイトはこう評した。
「うらやむほどの一流の畑を所有しているシャルル・マニャンはまたしても力強いパフォーマンスを見せてくれた。このドメーヌの畑仕事は真剣そのものだ。ブドウの木は比較的高いところに生け垣で覆われ、代々一族が独自に厳選されたものが植樹されている。2019年に新設されたワイナリーでは発酵温度を比較的低く保ち、パンチダウンではなくポンプオーバーで穏やかな醸造を行っている。新樽の使い方はますます巧みになり、樽熟成は比較的短いままである。2022年は、ドメーヌの2017年を深く凝縮したバージョンと言えるだろう」(ワインアドヴォケイト2024年1月19日号)
【ジュヴレ・シャンベルタン・レ・カズティエ】
ジュヴレを代表するプルミエ・クリュの一つ。ドメーヌの看板ワインともいえる1本。カズティエの畑は標高360m~300mの急斜面に位置する。斜面の上部から下部かけて土壌が異なる。カズティエの丘の上部から下部まで地続きの畑を所有するのはアンリ・マニャンとフェヴレのみ。4つの異なる土壌をブレンドした稀有なカズティエ。所有面積1.46ha。平均樹齢65年の超古樹。カヴァン社製ジュピーユ、コンピエージュ、フォンテーヌブローの各森産の新樽50%、1~3回使用樽50%で10カ月の熟成。しなやかなタンニンと果実味に魅了されるリッチな美酒。ちなみに自宅の裏はカズティエの畑である。
ワインアドヴォケイトではアルマン・ルソーより高評価。絶賛のヴィノス評を要約すると以下の通り。
「2022年のカズティエはマニャンのキュヴェの中で最も熟していて、最も官能的な香りだ。瑞々しいレッドチェリー、ラズベリー、ほのかにイチジクの香りが溢れる。口当たりはミディアムボディで、口中に含むとタンニンはしなやかで、果実味は肉厚で、グリップ感と密度が素晴らしい。リュショット・シャンベルタンよりも馬力がある。そして余韻は傑出している。素晴らしい」
★ワインアドヴォケイト 92~94点
The 2022 Gevrey-Chambertin 1er Cru Les Cazetiers offers up pretty aromas of cherries and raspberries mingled with spices, peonies and orange zest. Medium to full-bodied, ample and satiny, it's charming and sensual, with excellent depth of fruit, supple tannins and a saline finish. (Wine Advocate Published: Jan 19, 2024)
★ヴィノス 93~95点
飲み頃:2027~2048年
The 2022 Gevrey-Chambertin Les Cazetiers ler Cru has the ripest and most sensual of Magnien's cuvées on the nose, adorned with lush red cherry, raspberry and light fig scents. There's a soupçon of exoticism in situ. The palate is medium-bodied with pliant tannins, quite fleshy in the mouth with good grip and density. There is more horsepower even when contrasted against the Ruchottes-Chambertin. Lingers wonderfully on the finish. Excellent.(By Neal Martin on November 2023)


▲Wine Advocate