【マリウス・ドラルシュ/エティエンヌ・ドラルシュ】
ペルナン・ヴェルジュレス最高峰の造り手として名を馳せたフィリップ・ドラルシュ。
かつてパーカーはドラルシュをこう絶賛していた。
「フィリップが父の名を受け継いでドメーヌを継いだのは1987年である。ブルゴーニュマニアは有名な村の有名な生産者のワインしか求めないという傾向があるので、ペルナン・ヴェルジュレスでひっそりとやっていたドラルシュは長く注目を集めなかった。私はセラーにあったドラルシュの1995年を試飲して、このドメーヌは回り道してでも寄ってみる価値があると確信した」
「ワインの品質と価格のバランスはブルゴーニュにおいて驚くべきものであり、ボルドーのいくつかの偉大なシャトーを困惑させている」
「コート・ド・ボーヌの最高の生産者の一人である。このドメーヌのワインはかなりのお値打ち品だ」
2003年、修業から帰ってきた息子、エティエンヌ・ドラルシュがドメーヌに加わった。エティエンヌが実質的に独力で仕込んだ2005年ヴィンテージを飲み、父フィリップは引退を決意したという。その直後2007年にフィリップは死去し、2008年からエティエンヌが正式にドメーヌの当主となった。2019年までドメーヌ名は創設者の祖父マリウス・ドラルシュ名だったが、2020年を機にエティエンヌ・ドラルシュ名に変更し、ペルナン最高峰の造り手は新たなスタートを切った。
エティエンヌは父親から教わった木製発酵槽を使用した伝統的でシンプルな醸造法を踏襲し、栽培も厳格なリュット・レゾネを継承したが、さらなる可能性を求めビオロジック栽培に転換。2022年ヴィンテージから全てビオロジックとなった。畑は馬で耕作している。赤ワインは除梗され温度管理されたステンレスタンクを使用し自然酵母で発酵。新樽率30%以下で12~16カ月熟成。白ワインは水平の空気圧式プレスで繊細に圧搾し、古樽を使用し自然酵母で発酵。すべてのワインは清澄、濾過をせずにビン詰めされる。
白はペルナンやコルトン・シャルルマーニュの美点を余すところなく堪能できる現代ブルゴーニュ白ワインの傑作ともいえる仕上がり。繊細な花の香りとしっかりとしたミネラルを感じ、洗練された優雅さと活気に満ちた果実の旨味溢れる美酒。赤はコストパフォーマンスに優れ、繊細な料理を引き立てる軽やかで上品なスタイル。フルーティな果実味とストラクチャーが絶妙なバランスを成し、時間とともに優雅に進化するワイン。エティエンヌに代替わりしてからワインはさらに洗練され、現代ペルナンの最高峰のみならず、コート・ド・ボーヌのトップ・ドメーヌの一つと言っても過言ではないだろう。
【ペルナン・ヴェルジュレス・レ・コンボット・ブラン】
「レ・プラント・デ・シャン・エ・コンボット」と「ラ・モラン」の2区画のブドウで造られる。石灰質土壌。平均樹齢35年の古樹。新樽率20%で12カ月間樽熟成。無清澄、無濾過でビン詰め。しっかりとしたミネラルと瑞々しい果実味で彫りの深いワイン。村名クラスのワインとして文句のつけようのないクオリティ。白/ACペルナン・ヴェルジュレス
【試飲】
グラスからレモン、ハーブの香りにほのかに樽香も感じられる。瑞々しい果実味とフレッシュでバランスの良い酸が口中で弧を描くように広がっていく。角がなく、まるで球体のような果実味でアフターに爽やかな酸とほのかにビターな味わいが染み渡る。正直ペルナンの白なんてあまり飲んだ記憶がないが、おそらく今まで飲んだ中で1番旨いかもしれない。掛け値なしのお値打ちの1本。(2024年4月上旬試飲)