【ル・ゲレック・デュクエ】
ジュヴレ・シャンベルタン新世代のスター、ドメーヌ・アンリ・マニャンの当主シャルル・マニャン。シャルルはジュヴレ村の栽培者組合長兼アペラシオン保護管理委員会のプレジデントも務めている。その彼が「間違いなく凄い生産者になるから」と熱烈に推薦したのが新星ドメーヌ、ル・ゲレック・デュクエ。
 
　ル・ゲレック家は、ジュヴレ・シャンベルタン村に北接するブロション村に1910年より続くブドウ栽培家の家系。1991年の2代目翁の引退に伴って、畑をジュヴレ・シャンベルタンの人気ドメーヌ、ジャンテ・パンシオにフェルマージュ（賃貸契約）していたが、2018年の契約期間満了を機に、フランス国立衛生安全局の農業技師として植物保護の研究に従事していた4代目ミカエル・ル・ゲレックが継承した。醸造家としての新しい人生を歩むことを決断した彼は、アンリ・マニャンのシャルルの下で修行した後、モレ・サン・ドニの名家、ピエール・アミオで栽培に従事していた元義兄のアルノー・デュクエとともに、ドメーヌ・ル・ゲレック・デュクエを設立し、2019年より自身のワイン造りをスタートした。
 
　植物保護や環境保全の必要性を誰よりも理解しているミカエル、そして自然をこよなく愛するアルノーは、継承直後から実質ビオロジックの厳格なリュット・レゾネ栽培を開始。翌2019年には、畑に限らずドメーヌ運営のあらゆる点において高度なサステナビリティが求められる「Haute Valeur Environnementale（高い環境価値）」の最高段階「レベル3」の認証を取得した。
 
シャルル・マニャンはこう語る。
「私の下での修行を希望する、無数の醸造家の卵たちを受け入れてきましたが、その後友人と呼べるまでになったのはアルノーだけだった。畑では、まるでブドウ樹を慈しむかのように心のこもった仕事をしてくれた。醸造所では、誰もやりたがらないような面倒な仕事にこそ進んで取り組み、かつ、すべてが正確だった。私が出張などで一定期間ドメーヌを留守にする間、鍵を預けられたのは彼だけ。アルノーとミカエルの独立後、ファーストヴィンテージの「ジュヴレ・シャンベルタン2019」を樽から試飲させてもらったが、シルクの衣のような上品な口当たりに衝撃を受けると同時に、まるで彼らの人柄が表れているかのような、優しさに溢れたナチュラルな味わいに心を打たれ、ちょっと泣いてしまった。」
　
　総面積わずか3.5ヘクタールのミクロドメーヌだからこそ、栽培も醸造も自分たちが納得できるまで行う。古樹のブドウで造られた彼らのワインは、繊細でありながら骨格のしっかりしたピュアな果実味と力強さを秘めている。2019年が初ヴィンテージでほとんど無名の造り手なのに2021年ヴィンテージが早くもヴィノスで取り上げられた。評を抜粋すると。
「ジュヴレ・シャンベルタン・クロ・シャンは生き生きとしたキルシュを帯びた赤い果実の立派なブーケを持つ。味わいはミディアムボディで繊細なタンニンがあり、きれいにバランスが取れている」（ヴィノス2023年1月）
「ジュヴレ・シャンベルタン・レ・ジョーヌ・ロワはクロ・シャンよりも少し力強さがあり、活力がある。味わいはミディアムボディで、爽やかな赤い果実があり、豊かな余韻に魅力的なクランベリーとクローブの香りを伴う繊細な構造を持っている。悪くない…いや全然悪くない！」（ヴィノス2023年1月）
 
現在リリースされているのは重厚なボトルが印象的な2種類のジュヴレ・シャンベルタンのみ。近い将来入手困難なカルト・ドメーヌになる可能性が大なのでブルゴーニュファンは要チェック。
 
【ジュヴレ・シャンベルタン・クロ・シャン】
クロ・シャンはブロション村に位置する畑。所有面積2.1ha。樹齢約90年の超古樹。収量は30hl/ha。ステンレスタンクでアルコール発酵後、新樽20%、1～2回使用樽80%でマロラクティック発酵＆15カ月間熟成。赤／ACジュヴレ・シャンベルタン

【試飲】
熟した黒い果実とミントのような冷涼感ある香りがグラスから漂う。ミディアムボディで集中力のある果実味だが、非常にしなやかでエレガント。アフターには程よいコクと旨味が心地よい。はっきり断言すれば下手なプルミエ・クリュよりよっぽど上質である。シャルル・マニャンが彼らのワインを推すのが肯ける。個人的には20年以上前に初めてアルマン・ルソーのジュヴレを飲んだ時のことを思い出した。ブルゴーニュファンは絶対に試してみる価値あり。（2024年6月上旬試飲）