【ヴェルジェ】
白ワインの魔術師と異名をとる天才醸造家、ジャン・マリー・ギュファン。1970年代に妻と共にベルギーからブルゴーニュに移住し、マコンで自らのドメーヌ、ギュファン・エナンを設立。安ワインだったマコンのイメージを覆し、瞬く間にトップ生産者の仲間入りを果たした。今やブルゴーニュファンには説明不要の存在。
フランスのワイン専門誌「ベタンヌ・ドゥソーヴ」では5つ星の最高評価。「RVF(レヴュー・デュ・ヴァン・フランス)」でも最高の3つ星の評価。ちなみにベタンヌ・ドゥソーヴで5つ星を獲得しているブルゴーニュの生産者はロマネ・コンティやアルマン・ルソーなどを含めてわずか11件のみ。またワインアドヴォケイト、ワインスペクテーターなどでの高評価は枚挙にいとまがないほど。誰もが認めるシャルドネの名匠である。
そんな彼が1980年から立ち上げたメゾンがヴェルジェ。コストパフォーマンスが高く、白ワインが好きなブルゴーニュファンにはお馴染のブランド。「ヴェルジェを始めたのはマコン以外でシャルドネの新しい可能性を見つけたかったから。色々なシャルドネに出会うと興奮する」とギュファンは語る。
現在、「シャブリ」「コート・ドール」「マコン」など各地のブドウ栽培家や造り手と情報交換をしながら、その年の買取り区画を決めていく。最良のブドウが入手出来ない時はその区画のキュヴェは造らない。買い取り先は非公開だが、誰もが驚くような造り手のブドウを入手しているという。実際、彼のカーヴを訪れたインポーターによると熟成中の樽には様々な有名な造り手の名前と区画が記入されていたという。
またヴェルジュには栽培チームもあり、一部の畑では栽培も自分達で手掛けている。醸造はドメーヌ・ギュファン・エナンとほぼ同じで、優しく圧搾し、フリーラン果汁を重視し、プレス果汁は完全に分けている。ワインはピュアな果実味に溢れ、コストパフォーマンスに長けた美酒に仕上がる。
【ヴェルジェの2020年】
「まず2020年の収量はこの10年間の平均程度。例年通り他の生産者と比べて、少し遅い収穫になりました。それは他の大勢の生産者と考え方が違っていたからです。私達はブドウ成熟の最終段階でPH値の下落以上にブドウが酸度を下げるとは考えていなかった。むしろこの時期こそブドウの凝縮度や複雑性にとって大切だと考えた。2020年というヴィンテージは、まさにこれを証明しました。8月の旱魃によってブドウの生育が妨げられ、生理学的な成熟は皆が思ってたより遅れていたのです。よってこの気温が高く、生育サイクルが早い年なのに本当の成熟は普通の年と同じようなタイミングだった。多くの生産者がここを間違えました。
2020年は早熟なだけでなく、凝縮度も例外的であり、我々造り手達にとっても極めて重要な年でした。このようなヴィンテージは滅多になかったはずですが、近年は温暖化により当たり前になりました。温暖化によるブドウの早熟は私達をこれからもずっと不安にさせるでしょう。2020年は多くの理由で造り手、ワイン業界、飲み手にとって忘れられない年になるでしょう」(ヴェルジェ醸造責任者/ジュリアン・デスプラン)
ワインアドヴォケイトでも2020年のヴェルジェをこう称賛している。
「ジュリアン・デスプラン(醸造責任者)は8月21日に収穫を始め、9月5日に終了した。最適な熟成を追求するため、区画ごとに、時には植樹されている列ごとに収穫を行った。凝縮感があり、緻密なこのヴィンテージは見事な仕上がりで、2017年と並んでヴェルジェの近年最高のヴィンテージとなるだろう。
以前にも書いたが、ヴェルジェのワイナリーは、ドメーヌ・ギュファン・エナンの小さなセラーとは異なり、大規模な施設だが、職人的な手法で賢くスケールアップされている。たとえば、水平型の大型ステンレスタンクは、樽と同じ比率で澱とワインの比を実現し、容器内に酸素を導入せずに窒素で澱を働かせることも可能だ。このような工夫と醸造責任者のジュリアン・デスプランの迅速な対応が、ヴェルジェがこれだけの規模で高品質のワインを提供できる理由を物語っている。
最高のキュヴェはマコネのエリートに属するものだが、ヴェルジェのラインナップには素晴らしい品質でケース購入できるものが豊富にあり、デイリーワインやグラスワインで提供するには理想的なものばかりだ」(ワインアドヴォケイト2021年8月6日号)
【マコン・シェルネイ・ル・クロ・サン・ピエール】
真南向きでブドウがとても良く熟す区画だが、粘土質土壌なので保水力が高くフレッシュさが保てる。発酵は12月の末に終了。ファーストプレスの果汁のみ使用。水平型ステンレスタンクで1カ月、木樽で4カ月発酵。新樽率は10%。その後水平型ステンレスタンクでバトナージュは行わずシュール・リーし、凝縮感も高いワインに仕上がる。
ワインアドヴォケイト評を抜粋すると以下の通り。
「2020年は、バター風味の果樹園のフルーツ、桃、バニラの魅力的な香り。ミディアムからフルボディで、生き生きとした酸と肉厚な果実の旨味があり、滑らかな口当たりでエレガントな白ワイン。幅広い飲み頃を提供できるだろう」
★ワインアドヴォケイト 90点
飲み頃:2021~2030年
The 2020 Mâcon-Charnay Clos Saint-Pierre offers up inviting aromas of buttered orchard fruit, peach and vanilla pod. Medium to full-bodied, satiny and charming, with lively acids and a fleshy core of fruit, it's a seamless, elegant white that will offer a broad drinking window. While this isn't quite as long, it's following on the heels of the Mâcon-Bussières more closely than it generally does.(Wine Advocate Issue 6th Aug 2021)