【ジャック・プリウール】
18世紀末にムルソーに設立されたブルゴーニュを代表する名ドメーヌ、ジャック・プリウール。1988年にアントナン・ロデ社が提携後はドメーヌのクオリティーは飛躍的に上昇し、スケールの大きなワインを生産している。特筆すべきはドメーヌの所有する畑の殆どがグラン・クリュとプルミエ・クリュ。このドメーヌのフラグシップのミュジニーを筆頭にシャンベルタン、エシェゾー、クロ・ヴージョ、コルトン・ブレッサンド。さらに白はモンラッシェ、シュヴァリエ・モンラッシェ、コルトン・シャルルマーニュという眩いばかり。グラン・クリュのアペラシオンの約3分の1を所有している。プルミエ・クリュはピュリニー・モンラッシェ・コンベット、ムルソー・ペリエール、ムルソー・シャルム、ボーヌ・クロ・ド・ラ・フェギーヌ(モノポール)、ヴォルネー・クロ・デ・サントノ(モノポール)、ヴォルネー・シャンパン、シャンボール・ミュジニー・コンブ・ドルヴォーなどの他、14のプルミエ・クリュ所有。そしてドメーヌのアイコンともいえる唯一の村名畑はムルソー・クロ・ド・マズレー(モノポール)でこの畑からは白と赤を造っている。
1990年から指揮をとるのは敏腕女性醸造家、ナディーヌ・ギュブラン。1997年には「レヴュー・ド・ヴァン・ド・フランス」で女性初のベスト・エノロジスト(醸造家)に選ばれたほど。1997年から全ての畑がビオロジック栽培となり、馬による耕作が行われている。ブドウの品質を保つため、収穫は15キロの小さな木箱を用いて手作業で行われる。ブドウは二重の選別台で選別され、最高の果実だけが残される。
赤ワインは100%の除梗が原則だが、ヴィンテージや区画に応じて全房を何割か使用することが増えている。マセラシオンは温度管理された開放式の木製大桶で平均20日間。白ワインは全房を空気圧プレスで圧搾。その後、果汁を12~14時間静置する。アルコール発酵と熟成はどちらもオーク樽で行われる。プルミエ・クリュは新樽率30%で約18カ月熟成、グラン・クリュは新樽率50~80%で約20~24カ月熟成させる。
【ジャック・プリウールの2022年ヴィンテージ】
ドメーヌ・ジャック・プリウールのオーナー、エドゥアール・ラブリュイエールが2022年のヴィンテージのことをワインスペクテーターのインタビューでこう語っている。(ワインスペクテーター2025年4月30日号)
「2022年のブルゴーニュは、豊かでありながら凝縮感があり、それぞれの区画の個性がはっきりと表れています。これは主に2022年ヴィンテージの品質によるものですが、新樽の使用量が減ったことでワインの透明感が増し、果実味とテロワールの個性が際立つようになりました。さらに、全房発酵を適度に行うことで、アロマには真の複雑さと華やかさが加わりました」
また醸造家のナディーヌ・ギュブランは「ドメーヌに入社してから一番気に入っているヴィンテージ」だと話している。今回グラン・クリュの新樽使用率は最大50%となっており、清澄も濾過も行われていない。ラブリュエールは2022年ヴィンテージをこう評した「フレッシュでフルーティー、フィネスとエレガンスを兼ね備えたワイン」
【ムルソー・クロ・ド・マズレー・ルージュ】
この畑はジャック・プリウールのモノポール(単独所有)。ドメーヌが造る唯一の村名ワインでもある。本来ならばプルミエ・クリュになってもおかしくない畑だが、プルミエ・クリュになると税金が高くになるため、1934年にあえてプルミエ・クリュの申請を行わなかったそうだ。特筆すべきはシトー派の修道士の時代からこの畑では赤と白の両方のワインが造られており、現在もそれが続いていること。おそらくムルソーで同じ畑の赤、白を生産しているのは現在ジャック・プリウールのみではないだろうか。もっともプルミエ・クリュになっていたら現在赤ワインは造られていなかったかもしれない。ちなみにクロ・ド・マズレーの畑は約3haで、白のシャルドネが2.75ha、赤のピノ・ノワールが0.25haである。
非常に珍しいACムルソーの赤ワイン。昔はムルソーでも赤ワインが多く造られていたという。だが白ワインの需要が高くになるに連れ、赤ワインの生産量は減っていった。現在ムルソーで造られる赤ワインは全体の僅か約2%のみ。しかもこれにはヴォルネー・サントノ(ムルソーにある畑だが赤ワインはヴォルネー表記となる)も含まれる。おそらくムルソー・ルージュの生産量は全体でも何千本の世界であろう。まさに「珍品の赤ワイン」。このクロ・ド・マズレー・ルージュはムルソーの赤ワインを代表する1本。赤、白飲み比べてみるのも面白い。2022年は除梗率50%で醸造され、17カ月樽熟成された。風味豊かなタンニンでリッチな仕上がりとなった。日本への入荷数は僅か60本。




