【フイヤ・ジュイヨ】
ブーズロン・アリゴテ以外は日本ではあまり見かけることのないコート・シャロネーズ地区のワイン。コート・シャロネーズの中で白のみを生産しているのがモンタニー。そのモンタニーを代表する女性醸造家がフランソワーズ・ジュイヨである。
メルキュレーの名門、ミッシェル・ジュイヨの長女として生まれた彼女は、ディジョン大学の醸造学部を卒業後、今日までワイン造り一筋に生きる、ブルゴーニュにおける女性醸造家の草分け的存在。父の下で4年間修業した後、1989年、自身のドメーヌをモンタニー・レ・ビュクシー村に設立した。
モンタニーは村名もプルミエ・クリュも、すべてシャルドネ100%。ジュラ期の化石を多数含有する石灰質主体の土壌で、華やかな芳香と美しいミネラルに富み、日照量が多いため、果実味たっぷりのフルーティーな味わい仕上がる。コストパフォーマンスに優れているモンタニーのワインだが日本で見ることは少ない。なぜならモンタニーは生産者が少なくドメーヌは7~8軒しかないという。
フランソワーズはモンタニーに関してこう語る。
「モンタニーのプルミエ・クリュは51区画もあります。それはテロワールがそれだけ多様であるということを意味します。複数区画のぶどうをブレンドされることがほとんどなのですが、私は子供たちの個性が一人一人異なるように、それぞれの畑の個性をできる限り丁寧に表現してあげたいと思っています」と。
実際彼女はモンタニーのプルミエ・クリュだけでも6種類(そのうち5つは単一畑)造っている。昨年(2012年)彼女が来日した時、飲み比べをさせてもらったが、驚くほどに畑の違いが如実に表現され、テロワールの違いを学ぶにはうってつけの教科書の様な作品群であった。
ちなみフランソワーズ・ジュイヨは、「Femmes et Vins de Bourgogne」(ブルゴーニュ女性醸造家協会。2011年2月現在、36の生産者が加盟)のメンバーとしても活躍しており、同じくメンバーであるシュニュ姉妹や、ファビエンヌ・ボニー、クロティルド・ダヴェンヌなどからも姉御と慕われている。女性だけの審査員で試飲が行われる「フェミナリーズ・コンクール」でも、毎年のように金賞を受賞している。まさに女性が造る女性のための美しく、エレガントなワインである。
【モンタニー・レ・グラップ・ドール】
グラップ・ドールはプルミエ・クリュの中で唯一単一畑ではない。あえて10区画(ピエール、ヴァリネ、ヴァリニエール、エポール、マレなど他10区画)のブドウをブレンドすることによってアロマを極限まで複雑化することを志向したキュヴェ。マロラクティック発酵までステンレスタンクで行った後、フードル(大樽)で8ヶ月間熟成。泥土石灰質土壌で樹齢60年以上の古樹も含まれる。テロワールの異なる10区画のブドウをブレンドすることによって百花繚乱の複雑なアロマが生まれ、彼女の全ワインの中でもっともミネラル感豊かな逸品。白/1級畑