【ルイ・ニケーズ】
ドン・ペリニョン・ロゼのブドウを供給するなど1級格付けながら特級と並ぶ評価を受けるオーヴィレ村に居を構えるルイ・ニケーズ。現当主は若き醸造家夫婦ロールとクレモン。二人は醸造学校の同級生だった。醸造学校卒業後、ルイ・ニケーズの4代目になるロールは実家に戻り父親の元でシャンパーニュ造りをスタート。一方クレモンはジャック・セロスで栽培、醸造を担当した後に、グラン・クリュ・マイィの協同組合でデゴルジュマンの責任者として活躍。2012年よりルイ・ニケーズに加わり、妻ロールと共に4代目として働くことになった。
ドン・ペリニョンと同じ丘の区画にニケーズは9.3haの畑を所有する。村の中心にあるチョーク層の丘はモンターニュ・ド・ランスを代表する高品質産地として古くから有名だが、現在はモエ・エ・シャンドン社が大部分を所有。主にドン・ペリニョン・ロゼに使用されていると言う。ニケーズは同じ丘の斜面に複数の小区画を持つ。斜面によってテロワールが異なるため、各区画に適した品種を選択し栽培している。
「モエ・エ・シャンドン社の陰に隠れてしまい、オーヴィレ村のテロワールの良さが語られる機会が少ないのが非常に残念。以前この村ではピノ・ムニエも多く栽培されていた。しかし最近では大手ネゴシアンやメゾンに販売する栽培農家は、高価格で売り易いピノ・ノワールやシャルドネばかりを栽培する様になってしまった。この村で造られるピノ・ムニエの質の高さにも、もっと注目すべきだと思う」と語る。ニケーズは現在もピノ・ムニエを栽培している。しっかりとした骨格を持つピノ・ムニエを栽培するには最適な土壌だからだ。そのピノ・ムニエにこだわったキュヴェがムニエ・デ・モワンヌだ。
【プルミエ・クリュ・ムニエ・デ・モワンヌ・エクストラ・ブリュット2014】
オーヴィレ村のピノ・ムニエの集大成ともいえるキュヴェ。この2014年が初ヴィンテージ。古樹のピノ・ムニエのみを使用。3区画(Calcaire、PierreMeulière、Argile)をアッサンブラージュ。土壌もそれぞれ異なり石灰岩盤、粘土、砂と小石。収穫後、コカール(古い水平式プレス機)でプレスし、ステンレスタンクで野生酵母のみで発酵。その後オーヴィレ産の大樽(50%)とステンレスタンク(50%)で熟成。王冠ではなくコルクで瓶内2次発酵を36カ月以上行う。コルクはミュズレではなく麻紐で固定。生産数は980本の限定品。メゾンを代表する渾身のシャンパーニュ。白/1級畑/レコルタン・マニプラン
【試飲】
グラスからハツミツ、柑橘系果実、アンズの香りが立ち上がる。色調から熟成感と凝縮感ある果実味をイメージする。口中に含むとイメージ通りの旨味溢れる果実味が広がる。いや、正確に言えばイメージを上回る旨さだった。エクストラブリュットだが甘味を感じるほどの凝縮度で、熟した最上のブドウを使用した証左だろう。個人的にはピノ・ムニエのイメージはピノ・ノワールよりやや低いランク付けだったが、これを飲むとそのイメージが覆される。優良のピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールと比肩するクオリティー。ピノ・ムニエのポテンシャルの高さを実感する。豊潤な果実味の裏でミネラルと酸がしっかりとした骨格を成している。造り手のピノ・ムニエのこだわりが伝わってくる。今飲んでも十分に楽しめるし、2014年は当たり年なので数年熟成させても面白いだろう。ピノ・ムニエのポテンシャルの高さと素晴らしさを教えてくれる。文句なしの旨さ。(2020年12月下旬試飲)