【ドワイヤール】
コート・デ・ブランの南に位置するヴェルテュ村。シャンパーニュ最上のプルミエ・クリュの一つと評されるこの村に居を構える知る人ぞ知る名手がドワイヤール。創立者であるモーリス・ドワイヤールが第一次世界大戦後にこの地にワイナリーを購入し、1927年から自社詰めのシャンパーニュ造りを続けてきた。2006年曾孫のシャルル・ドワイヤールの代になりメゾンはさらに飛躍していった。
1992年から畑はビオディナミに転換され、所有畑を拡張し、現在はヴェルテュの他、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェ、アヴィーズ、クラマン、アイという珠玉の特級畑を含む11haを所有。その内90%がシャルドネ、10%がピノ・ノワールという栽培比率。シャルルはとりわけ土壌の活性化に注力し、ビオディナミ栽培に転換後、ほとんどの畑が馬で耕された。またコート・デ・ブランでは珍しく、ほぼ全てのシャルドネがコルドン仕立(垣根つくり)で栽培され、これによって収量が自然と低めに抑えられ、凝縮度の高いブドウが生まれる。さらに最上級のブドウのみを選別し、収穫量の50%以上はネゴスに売却してしまう。
ワインに使われるのはフリーランジュースのみで、各区画に分けて醸造が行われる。アルコール発酵はステンレスタンクとバリックを併用。オークのおかげでワインは丸みを帯び、アロマがより複雑になる。また、発酵の段階から長い間澱と接触していることでフレッシュさを保ちつつも旨みをしっかりと引き出している。アロマのポテンシャルを最大限引き出すためにノンヴィンテージであっても約5年と非常に長いビン熟を行う。シャルルは「泡は口の中で勢いよく弾けるものではなく、あくまでもハーモニー、その他の要素との統合が大事」と考え、上質でエレガントなテクスチャーを保つためにガス圧も通常6気圧のところを4.5~5気圧にしている。ドサージュは低めに設定され、生み出されるワインはまさにナチュラルな旨味を持った逸品となる。
そんなドワイヤールのワインはワインアドヴォケイトなどの専門誌で高評価され、ドイツの著名なワイン評論家アイヒェルマンは、ジェローム・プレヴォーやセドリック・ブシャール、ブノワ・ライエらと並ぶ4つ星評価をするほど。
しかし2017年、31歳という若さで心臓病のためシャルルが急死。シャンパーニュのライジングスターの突然の死は業界に衝撃を与えた。現在メゾンはシャルルの父、ヤニークが復帰し、シャルルの弟、ギヨームと新たなスタートを切った。品質は落ちることなく今も傑出した美泡を産んでいる。
2021年4月1日号のワインアドヴォケイトで現在のドワイヤールをこう評している。
「この由緒あるヴェルテュのメゾンを訪れることは、シャンパーニュ滞在中のハイライトのひとつであった。メニル・シュール・オジェ、オジェ、アヴィーズ、クラマン、アイなどの優良畑を所有し、除草剤や農薬を使わず凝縮感のあるブドウを栽培している。深く、濃縮され、個性的なドワイヤールの全てのワインは真剣に注目する価値がある。このメゾンの品質と長い実績を考えると、これらワインはもっと知られてもいいはずである」
【キュヴェ・ブラン・ド・ブラン・グランクリュ・エクストラ・ブリュット】
コート・デ・ブランの4つグラン・クリュ、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェ、アヴィーズ、クラマンのブレンド。シャルドネ100%のヴィンテージ・シャンパーニュ。平均樹齢は40年。この2013年産はバリック100%で発酵、マロ発酵はせず70カ月以上熟成。ドサージュは2g/Lのエクストラ・ブリュット。今回入荷のロットは2021年7月22日デゴルジュマンなので90カ月以上熟成された。
柑橘系の果実、桃、白い花、焼きたてのパンの香りがグラスから溢れるフルボディ。深遠な果実味が長いアフターに誘う美酒。心地よい塩味とドライフルーツのニュアンスを伴う長い余韻が印象的。
★ワインアドヴォケイト 95点+
飲み頃:2023~2043年
The 2013 Extra-Brut Blanc de Blancs Grand Cru has also turned out beautifully, unwinding in the glass with notes of citrus oil, peach, white flowers and freshly baked bread. Medium to full-bodied, seamless and complete, it's taut and chiseled, with serious reserves of concentration and a long, mineral finish. Disgorged in spring 2021, while its quality is apparent, this is predictably a little introverted out of the gates, so I look forward to revisiting it later this year. (Wine Advocate Issue 24th Sep 2021)