【ポル・ロジェ】
シャンパーニュを代表する銘メゾン、ポル・ロジェ。1849年に設立され「気品と優美」を哲学とし、格調高いシャンパーニュとして定評がある。このメゾンを語る時、欠かすことのできないのが英国での抜群の人気。その品質は元英国首相、ウィンストン・チャーチルを虜にし、2004年には英国王室御用達に任命された。記憶に新しいところでは2011年4月ウィリアム王子とキャサリン妃のロイヤル・ウェディングで「ホワイト・フォイル」と呼ばれるブリュット・レゼルヴNVマグナム瓶が供された。
木樽を一切使用せずステンレスタンクで発酵させることによって、ブドウ本来の繊細な味わいとピノ・ノワールの力強さを生かした重厚なスタイルに仕上がる。しかし現社長ノワイエル氏(ブルゴーニュのモメサンからヘッドハンティング)が就任した1997年ごろには品質に陰りが見えていた。そこでクリュッグで長年、醸造長をしていたドミニク・プティ氏を醸造責任者に抜擢。それを機に発酵タンクをセメントからステンレスに刷新した。
現在全部で188の発酵タンクがあり、畑の区画別に醸造するためタンクは25ヘクトリットルから160ヘクトリットルまでの種類があるという。10年以上かけて醸造設備をリニューアルしたという。また二番搾りのタイユの使用を止め、一番搾りのキュヴェのみを使うようにした。そしてルミュアージュ(動瓶)は今では珍しくなった職人による手作業で、地下に広がるセラーはエペルネで最も深いという。
ワインアドヴォケイトではポル・ロジェのシャンパーニュをこう称賛していた。
「ポル・ロジェはシャンパーニュで最も優れたメゾンの一つで、トップ・ヴァリューのワインを提供し続けている。
クリュッグやルイ・ロデレールとは対照的にポル・ロジェでは樽は一切使用せず、独自のスタイルで品質を高めている。その特徴はフルボディで果実味豊かで、素晴らしいフィネスだけでなく、ほぼすべてのキュヴェが早い時期から楽しめ心地よい果実味を満喫できることだ。
ポル・ロジェでは長時間かけたデブルバージュ(不純物を沈殿させる作業)を行い、濾過していない奇麗なマストで温度管理されたステンレスタンクによる低温アルコール発酵が行われる。すべてのワインはマロラクティック発酵を経て、試飲、ブレンドしビン詰めされる。二次発酵と熟成はエペルネにあるポル・ロジェのセラーで行われる。セラーは路面から33メートル下にあり、温度は9.5度と他の多くのシャンパーニュのセラーより0.5~1.5度低い涼しい環境下で行われる。このため二次発酵のスピードが遅くなり、澱の上での熟成期間が長くなる(ノンヴィンテージは4年以上、ヴィンテージは7年以上)その結果、素晴らしいフィネスと長期熟成が実現するのだ」(ワインアドヴォケイト2018年6月30日号)
【キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル】
ポル・ロジェのシャンパーニュをこよなく愛した元英国首相ウィンストン・チャーチル。このキュヴェはチャーチル死去10年後(1975年)に彼へのオマージュとして造られたプレステージ・キュヴェ。ちなみに初ヴィンテージとなった1975年が市場に初リリースされたのは1984年。その後は素晴らしい年のみリリースされる。
戦前から使われたグラン・クリュの古樹のみを使用。シャルドネとピノ・ノワールのブレンドだが、ブレンドの比率は門外不出で今まで1度も明かされたことがない。
ワインは2回澱引きされる。1回目はプレス後すぐに、2回目は温度7度に管理されたステンレスタンクで行われる。品種別に村毎で分けて発酵させた後、完全にマロラクティック発酵を行う。その後、セラーの最も深い地下33メートルの場所でじっくりと熟成させる。ドサージュ7g/L。
ピノ・ノワールが骨格、力強さを与え、シャルドネがエレガンスとフィネスとシルキーさを与える。出来上がったシャンパーニュはチャーチルが愛した力強くフルボディで、しっかりと熟成した味わいとなる。それはボランジェに比肩する力強い男性的な美酒。このキュヴェはリリースされた時点で充分に楽しむこともできるが、さらなる熟成も充分に期待できる。贈答品としても最適な特製ギフトボックス入り。
今回入荷の2013年はシャンパーニュの当たり年。オレンジオイル、レモンのコンフィ、カシス、アプリコットなどの香りがグラスから溢れ、さらにブリオッシュとハチミツの香りが後を追う。深遠な果実味に鮮やかな酸、美しく洗練された口当たりでこのチャーチルの魅力と楽しさが際立っている。しなやかで優美な仕上がりとなった。2022年4月デゴルジュマン。
★ワインアドヴォケイト 96点
飲み頃:2021~2045年
The 2013 Cuvée Sir Winston Churchill has turned out especially well, wafting from the glass with aromas of orange oil, confit lemon and crisp golden orchard fruit, complemented by subtle hints of brioche and clear honey. Medium to full-bodied, pillowy and seamless, with a deep core of fruit, bright acids and a beautifully refined mousse, this is an elegant, penetrating rendition of Churchill that stands out for its charm and effortlessness. (Wine Advocate Issue 15th Mar 2022)
★ワインスペクテーター 95点
飲み頃:2022~2035年
An expressive Champagne, with ripe and juicy pineapple, cassis and apricot fruit flavors married to notes of brioche, saline, lemon curd and honeysuckle. Backed by a spine of fresh acidity, this is well-cut and harmonious, with the fine and creamy mousse carrying the flavor range on the lasting finish. Drink now through 2035. (Wine Spectator Issue Jun 30,2022)
★ヴィノス 97点
飲み頃:2027~2043年
The 2013 Brut Cuvée Sir Winston Churchill is fabulous. Rich and remarkably pure, the 2013 is super- expressive right out of the gate. Bright saline notes cut through a core of lemon confit, dried flowers, apricot, tangerine peel, mint and sage. As compelling as the 2013 is, it really needs more time to open a bit. There is a feeling of transparency here that is so alluring. The 2013 is a terrific example of power with no excess weight in Champagne. I loved it. Disgorged: July 2021. Dosage is 7 grams per liter.(By Antonio Galloni on March 2022)