【ユレ・フレール】
モンターニュ・ド・ランスの東に位置するリュ―ド村に居を構えるユレ・フレール。1960年代から家族経営を続ける歴史ある造り手。2008年から当主を務めるのは70年代生まれのフランソワ・ユレ。フランソワの代になってから品質がさらに向上し、人気、評価ともとどまることを知らない。特にフランス国内でのソムリエからの評価が高い人気メゾン。
フランソワはディジョン大学の醸造学部を卒業後、シャンパーニュ、ブルゴーニュなどのドメーヌ、さらにニュージーランドなどの新世界のワイナリーで研鑽を積んだ。特に影響を受けたのがブルゴーニュとニュージーランドだった。ブルゴーニュの「テロワールを重視した伝統的醸造法」とニュージーランドの「既成概念にとらわれずに新しい手法に挑戦する精神」。この2つを自分のシャンパーニュ造りに取り入れようと誓い2003年シャンパーニュに戻ってきた。
まずは畑の除草剤使用を止め、一部はビオディナミを取り入れ自然農法に転換した。全て同じ手法で行っていた醸造を、キュヴェや畑の個性に合わせて醸造法を変えていった。マロラクティック発酵の有無、発酵期間、発酵温度など全てキュヴェ毎に細かく変えた。これにより個性が際立ったキュヴェに変化していった。モンターニュ・ド・ランス独自の美しい酸とミネラルを表現し、深みのあるシャンパーニュに仕上がっている。
現在フランソワは10haの畑を管理している。祖父が亡くなった後、相続によって畑は父と2人の兄弟(叔父)に分割されたが、すべての畑をフランソワが管理している。書類上では叔父たちの畑からブドウを購入していることになるので、ネゴシアン・マニプランの表記だが、実質上はレコルタン・マニプラン。ヴィルドマンジュ、ブルイエ等複数の村などに畑を所有しているが、中心となるのはグラン・クリュに隣接しているプルミエ・クリュのリュ―ド。リュードは40cm程しかない表土は粘土が主体。下層には石灰が多く含まれる白亜紀の土壌。石灰含有率が非常に高く、造り手の間でも硬質なシャルドネの産地として近年注目が集まっている。
ユレ・フレールにはソレラシステムで1982年から熟成されている秘蔵のリザーヴワインがある。ノンヴィンテージのシャンパーニュでもこのリザーヴワインをブレンドすることによって複雑で深みのある逸品に仕上がっている。
【キャトル・エレマン・シャルドネ・エクストラ・ブリュット】
キャトル・エレマン(4 Elements)はキュヴェ名通り、【4つの要素】を表現したキュヴェ。「ヴィンテージ」「品種」「区画」「ユレ・フレール(栽培・醸造)」。フランソワが考える新しいコンセプトのシャンパーニュ。現在このキュヴェがメゾンのフラグシップでもある。秘蔵のリザーブワインを使わないヴィンテージ・シャンパーニュ。単一品種、単一畑、単一年のこのキュヴェをフランソワは「妥協なきシャンパーニュ」と公言している。
600Lの大樽で発酵、熟成。酸素とコンタクトさせる為に王冠ではなくコルクで栓をして48カ月のビン内熟成。マロラクティック発酵は行わない。
リリー・ラ・モンターニュ村で1964年に植樹されたレ・ブランシュ・ボワ(0.8ha)の古樹のシャルドネを100%使用。畑はモンターニュ・ド・ランスでは珍しい真南を向く斜面で、岩が多い石灰岩土壌。初ヴィンテージは2010年でこのシリーズではシャルドネが最初に造られた。2011年、2012年は仕上がりに納得いかずビン詰めされなかった。
このキュヴェは若いうちは厳格で、本来の表情を表すのに時間がかかる。もし若いうちに開けるなら、前もって開けとくのがお勧めである。よってこのワインの真の姿をみるにはもう少し時間(2024年以降)が必要かもしれない。熟成を経て蕾から大輪となっていく。良年2014年。このロットは2019年4月デゴルジュマン。ドサージュ3g/L。