【ジャマール】
ジャマールの創設は1934年。パン屋を営んでいたエミリアン・ジャマールとモエ・エ・シャンドンのカヴィストとして働いていた義父が村の醸造所を購入したのが始まり。当時は村に共同組合が無かったため、近隣の造り手はジャマールの醸造所にブドウを持ちこみ圧搾機を使用。その使用料やパン代のツケとして支払われたブドウを使ってワイン造りを始めた。
現在は4.8ヘクタールの畑を所有し、家族経営のままで続けられる量だけを丁寧に造り続けている。ジャマールの本拠地はコトー・シュッド・デペルネイのサン・マルタン・ダブロワ村。コトー・ド・シュッド・デペルネイは1996年に誕生した地域で、エペルネの南に位置し現在16の村が所属している。
シャンパーニュの味わいの基礎となるチョーク層が浅い表土のすぐ下に豊かに広がり、起伏の多い丘の斜面に張り付く様にブドウ畑が位置している。まだ余り知られていない地域だが、良質のチョーク層に恵まれヴァレ・ド・ラ・マルヌのふくよかさと、コート・デ・ブランのシャープなミネラルの両方を併せ持つワインが産出される。注目のシャンパーニュの新星、ラエルト・フレールなどを輩出している。
ジャマールの栽培品種はピノ・ムニエ50%、シャルドネ40%、ピノ・ノワール10%。ピノ・ムニエは1930年代に植えられた区画を所有。この地域でも樹齢80年以上のピノ・ムニエは非常に希少。
またジャマールの醸造所には19世紀後半から、130年以上も使い続けている四角いプレス機がある。円形の水平式圧搾機に比べて、より時間をかけて圧搾が可能で果梗や果皮からの余分な成分の抽出を避ける事が出来るという。家族で造っていけるだけの量を大切に扱いたいので、効率重視の最新設備は必要ないという。
【キュヴェ・プレステージ・トリロジー2011】
コトー・シュッド・デペルネ地域に所有する畑の中で、その年の最も条件の良い区画から収穫したピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニの3種の品種を別々に発酵させてアッサンブラージュする特別キュヴェ。その年の個性的な区画を使うので、毎年使われる区画は変わる。セメントタンクで品種別に発酵。シュール・リー60カ月熟成。ドサージュ7g/L。
【試飲】
色調はゴールドで奇麗な泡立ち。レモン、アプリコット、ミネラル、白い花、ハーブの香りを感じる。酸味は弱く、熟した果実の旨味が口中に染み渡る。エレガントでほどよい熟成感は、食前酒は勿論のこと食中酒としても最適。アフターにはしなやかな果実味とほのかなにビターの風味がやってくる。秀逸なヴィンテージ・シャンパーニュ。(2023年5月中旬試飲)