【JMセレック】
シャンパーニュの新世代として注目されるジャン・マルク・セレック率いるセレック。レコルタン・マニプランであるセレックは1969年、エペルネ市の南、ピエリー村に設立された。このピエリー村は傑出したピノ・ムニエの産地として知られる。その他に、ピノ・ノワールの聖地アイに隣接するディジー村、コート・デ・ブランのグラン・クリュに匹敵するといわれるシャルドネの産地、ヴェルテュス村などに現在9ヘクタールの畑を所有。1974年に当主となった2代目のリシャール・セレックの下で順調に発展を遂げ、2008年、息子のジャン・マルクが継承したことで、新たなステージを迎えた。
まずジャン・マルクは、それまでのリュット・レゾネ栽培からビオロジー栽培への切り替えを行った。2017年現在、すべての畑をビオディナミに移行した(認証は受けていない)。また一部の区画で馬による耕作を開始。醸造は除梗せず伝統的な木製垂直プレス機を使用。マロラクティック発酵を行い、発酵・熟成に228リットルと300リットルの樽を使用。また、父と共に2004年に導入した小樽による発酵・熟成の研究を深め、最新式の卵型コンクリート製タンク「ウフ・ノンブロ」(写真参照)を導入。このウフ・ノンブロは卵型の形状により、中でワインが止まることなく巡回するという。これらの試みによって「泡はよりきめ細かくなり、味わいはより複雑に、余韻は何倍も長くなりました」とジャン・マルク・セレックは語る。
そしてこう続ける。「スイスの腕時計は華麗で優雅ですが、中の機械は精緻を極めた職人技の集合体です。シャンパンも同じで、官能的で美味しい物を造るためには、栽培・醸造におけるひとつひとつの仕事すべてをミクロン単位でトゥールビヨン(機械時計の部品)を作るように、精密に、正確に行わなければなりません。私はシャンパンが合うべき料理に、完璧に合うシャンパンを造ることを目指しています」と。
彼の造るシャンパーニュは、まずその泡の質感と、みずみずしいアロマに驚かされる。口当たりはやわらかく、甘みや酸味、樽熟成させたシャルドネの香味、ミネラルの旨味などが絶妙に溶け合わさって、しっとりと口の中に広がる。ジャン・マルクが自負する余韻の長さはまさに絶品。シャンパーニュファンは注目のセレック。バックラベルにはアサンブラージュ、熟成期間、ドサージュ、デゴルジュマンなどの醸造データーが記載されている。セレックの真摯なワイン造りを象徴しているかのようだ。2015年には冷却機能付き重力式プレス機などを搭載した最新鋭ワイナリーが完成。さらなる高みを目指す求道者として、最高レベルの挑戦を続けている。
ワインアドヴォケイトではシャンパーニュ新世代のスターとしてはこう称賛された。
「以前にも書いたが、ジャン・マルク・セレックはシャンパーニュで最もエキサイティングでダイナミックな若手生産者の一人である。彼は2008年に実家のドメーヌに戻り、すぐに除草剤の使用を止め、ビオディナミ栽培を開始した。現在、彼のブドウ栽培の進歩が実を結び、これらのワインはますます力強くなり、リリースを重ねるごとに私の感動は増していった。かつてピエリーはかなりの名声を誇っていたが、セレックのおかげでそれを取り戻すことができるだろう。セレックのワインはすべてお勧めであり、読者のみんなにはこれらのワインをぜひとも味わっていただきたい」(2023年12月15日号)
【ソリスト・ピノ・ノワール・エクストラ・ブリュット2017】
ピエリー村の1級畑レ・ガイエールのピノ・ノワール100%で造られるブラン・ド・ノワール。白亜(石灰質)基板で多数の硬質方解石が表出した黄土粘土質土壌。1974年に植樹され平均樹齢約45年の古樹。350~600リットルのオーク樽100%で醸造後、10カ月間熟成。清澄、濾過はしない。王冠ではなくコルク栓で4年間ビン熟成。ドザージュは2g/l。デゴルジュマンは2021年10月。
高評価となったワインアドヴォケイト評を要約すると以下の通り。
「素晴らしいボトルの 2017は、オレンジ・オイル、ミラベル・プラム(西洋プラム)、澄んだ蜂蜜、乾いた白い花、焼きたてのパンの香りがグラスから漂ってくる。ミディアムからフルボディ、豊潤でまろやかな味わい。果実の肉厚な旨味、キレのある酸が長い余韻を奏でている。難しい(2017年)ヴィンテージの課題を超越している仕上がりだ」
★ワインアドヴォケイト 94点
飲み頃:2022~2035年
A terrific bottle, the 2017 Extra-Brut Soliste Pinot Noir Pierry 1er Cru Les Gayères unwinds in the glass with scents of orange oil, mirabelle plum, clear honey, dried white flowers and freshly baked bread. Medium to full-bodied, ample and pillowy, with a fleshy core of fruit, racy acids and a long, chalky finish, it transcends the challenges of the vintage. (Wine Advocate Published: Sep 01, 2022)
*セレックはレコルタン・マニプラン(RM)だったが2020年から少量の買いブドウを使用しているため現在はネゴシアン・マニプラン(NM)の表記となっている