ビオディナミ・シャンパーニュの新星、マリー・クルタン。このレコルタン・マニプランを率いるのは新進の女性醸造家のドミニク・モロー。2009年にデビューした彼女は一般的には無名の造り手だったが、ワインアドヴォケイト(2011年11月)で「近い将来シャンパーニュのスーパースターの一人になるだろう」とまで評された。クリーミーで芳醇な果実味で魅了する注目の造り手!2012年には世界一のレストランと称されるデンマークのノーマ(NOMA)にエフロールサンス、レゾナンスの2つのキュヴェがオンリストされた!
【マリー・クルタン】
ビオディナミ・シャンパーニュの新星として注目を集めるマリー・クルタン。このレコルタン・マニプランを率いるのは新進の女性醸造家のドミニク・モロー。
「子供の頃から化学薬品をまったく受けつけない体質だったので、病気になったらホメオパシー(極度に希釈した毒成分を投与することによって、体の自然治癒力を引き出す療法)などで治癒してきた」と語る彼女にとって、ビオディナミを選択したのは自然のなり行きであった。そんな彼女にビオディナミを伝授したのは巨匠ピエール・マッソン。彼はロマネ・コンティ、コント・ラフォン、ルフレーヴなど数多なブルゴーニュの銘ドメーヌにビオディナミを教えた人物。ブルゴーニュでビオディナミを学んだ彼女は、シャンパーニュ、オーブ地区のポリゾ村にあるレコルタン・マニプラン、ピオロ・ペール・エ・フィスに嫁いだ。2005年からピオロが積極的に有機栽培(2009年にエコセール取得)を実践し始めたのは彼女の影響であるのは想像に難くないだろう。
オーブに嫁いだ彼女はピオロのワイン造りに励みながら、シャンパーニュにおけるビオディナミの先駆者、ジャン・ピエール・フルーリーやベルトラン・ゴートロらと交友を持ち情報交換をしていった。そして2005年、夫から譲り受けた畑でビオディナミによる栽培実験をスタートした。彼女は振り返ってこう語る。
「私にとって本当に幸運だったのは、義父が長年のセレクション・マサル(注:畑から優秀な株を選び、穂木を取って苗を作り、もとの畑に戻す方法。これにより選別された優秀なブドウ樹が残るが、時間と手間がかかる骨の折れる作業)によって素晴らしいピノ・ノワールの古樹を残してくれたことです。ビオディナミによってこの古樹のポテンシャルをさらに深いところから引き出すことができました」
そして試行錯誤を重ね2009年に2つのキュヴェが初リリースされた。世界的には2009年6月23日にボルドーのヴィネクスポ内で開催された、ルネッサン・デ・アペラシオン(13カ国200以上のビオディナミ生産者が加盟)の試飲会で華麗にデビューを飾った。
オーブの魂とも言われるピノ・ノワール100%で造られる彼女のブラン・ド・ノワールは、小区画、単一品種、古樹へのこだわり、と言ったテロワール重視のポリシーで造られる。その姿勢は彼女が学んだブルゴーニュの影響が強く出ていると言って過言でないだろう。
なおメゾン名の「マリー・クルタン」は、農薬や化学肥料を一切使用せず、馬による耕作を行っていた曾祖母の名前。同じブドウ栽培家として敬意をこめて命名した。
2010年12月のワインアドヴォケイトでドミニク・モローのマリー・クルタンは初めて紹介された。無名の新人であるにもかかわらず下記のように好評価された。
「バール地区のポリゾ村にある小さな生産者、マリー・クルタンのシャンパーニュを初めて試飲した。飲む者を虜にしてしまう要素が非常に高いシャンパーニュだ。ここ数年でどのような進歩を遂げるか非常に興味深い」と。
そして、初ヴィンテージとなるレゾナンス・エクストラ・ブリュット(2007年産:ヴィンテージ表記なし)に90点、エフロールサンス・エクストラ・ブリュット(2006年産:ヴィンテージ表記なし)に92点の評価。
2011年11月のワインアドヴォケイトではさらに称賛される。
「ドミニク・モローは息を飲むようなワインセットだ。もし彼女がこのようなシャンパーニュを造り続けたら近い将来シャンパーニュのスーパースターの一人になるだろう。ワインアドヴォケイトの読者はこの素晴らしいワインを是非とも試飲すべきである」と
その後世界各国のワイン専門誌で注目を集め高評価されたのは周知のこと。
ヴィノス2023年11月号ではこう評された。
「ドミニク・モローのシャンパンはここ数年間、人々を魅了し続けています。熱心なミニマリストであるモローは、ビオディナミ農法で古樹のブドウを細心の注意を払って栽培している。セラーでも発酵は自然に任せ、人為的に手を加えることはほとんどない。ワインにはほとんどまたはまったくSO2が含まれず、エクストラ・ブリュットと表記されているがドサージュなしで瓶詰めされる。この手法は非常にリスクの高いアプローチだ。過去には、ドサージュが少ないために一部のワインは厳格すぎると感じたり、SO2が少なかったり、またはまったくないために少しぼんやりと感じられたりもした。しかし、近年の彼女のワインはそうではありません。試飲したシャンパンはスリリングで、深い満足感を与えてくれました」
記憶に新しいところでは2024年12月に行われたフランスのシャンパーニュマガジン【ビュル・エ・ミレジミ(bulles et millésimes)】主催のアカデミー賞的イベント「トロフェ・シャンプノワ2024」のレコルタン・マニプラン部門で「ヴィニュロン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。
【エフロールサンス・エクストラ・ブリュット】
ピノ・ノワール100%で造られたブラン・ド・ノワール。畑はポリゾ村。平均樹齢45年の古樹。ブルゴーニュで2~3回使用した225L樽で発酵、熟成。2年間以上のビン熟成を経て出荷。エクストラ・ブリュットの表記だが、実際はドザージュ・ゼロのノンドゼ。キュヴェ名の「エフロールサンス」は「開花」の意味。樽発酵によるバニラやブリオッシュのほのかな香りで、複雑で豊潤な果実味は長い余韻を奏でる。デゴルジュマンは2024年4月。
2018年のヴィノス評を要約すると以下の通り。
「2018年のエフロールサンスはピノ・ノワール100%の素晴らしいワインです。リッチで豊潤でクリーミーでとても印象的です。多くのワインが軽めとなったヴィンテージ(2018年)の中で、古樹のピノは本物の個性とニュアンスを持ち、際立っている。グラスの中で時間を置くと、ピノの広がり、ストラクチャー、テクスチャーの強さが解き放たれる。スパイス、キルシュ、ドライフラワーの香りがほのかに残ります」
★ヴィノス 94点
飲み頃:2024~2031年
The 2018 Extra Brut Efflorescence, 100% Pinot Noir, is superb. Rich, ample and creamy, the 2018 is super-impressive. Old vines yield a Pinot of real character and nuance that stands out in a vintage in which so many wines are on the lighter side. Time in the glass releases so much Pinot breadth, structure and textural intensity. Hints of spice, kirsch and dried flowers linger. No dosage. Disgorged: December 2023.(By Antonio Galloni on March 2024)