【ブリス‧アルーシュリー】
モンターニュ‧ド‧ランス西部に広がるプルミエ‧クリュ、エキュイユ村とサシー村。ともに砂質が主体の土壌で、ミネラリーで引き締めの強いスタイルとは一線を画し、ふんわりとした柔らかな味わいが特徴のシャンパーニュを産出している。ブリス‧アルーシュリーはこの2つの村に3.8haの畑を所有する注目の新世代の造り手。彼の父と祖父はブドウ栽培家でありエキュイユ協同組合のワインメーカーを務めていた。1987年生まれのブリスは2008年にドメーヌに参画した。「家族の畑のブドウで自分自身のワインを造りたい」と考え、少しずつではあるが自社瓶詰めへと舵を切り、2013年に初めて納得のいくワインに仕上がった。2018年からは単一畑への取り組みも開始し、現在では3つの単一畑のワインを生産している。彼の哲学は「畑作業から瓶詰めまで、環境に最大限配慮したワイン造り」と至ってシンプル。栽培では除草剤の使用を中止し、有機栽培に移行した。耕起や剪定、芽かきなどは太陰暦を用いて月の満ち欠けに則って作業を行う。2026年には全ての畑で有機栽培の認証を取得予定だという。
醸造においては初ヴィンテージの2013年から2017年までは発酵はステンレスタンクのみで行い、熟成にオーク樽を用いていたが、2018年から区画ごとに分けての樽発酵‧熟成に切り替えた。発酵には自然酵母を使用し、無清澄、無濾過、SO2の添加も最小限に留め、ドサージュ量も2g/L以下に留める。ブドウの持つ力を最大限に引き出し、テロワールの個性を明確に表現しようとしている。また、11月~2月の間は熟成中の樽を納屋に移動させ、ナチュラル‧フロストという方法でワインを安定させる。これは自然の寒さと霜の影響により、エネルギーを最小限に抑えた環境に配慮した形で酒石を安定させることに繋がるという。栽培、醸造に真摯に向き合う彼のワインは、砂質土壌由来のふんわりと広がる華やかさが美しく表現されている。また彼の畑は大部分が東または北東向きのため、午後の強い西日よりも朝の柔らかい日差しを浴びブドウは育ち、熟度がありながらフレッシュさをしっかりと保持している。
そんな彼のシャンパーニュは旨味溢れるふくよかで丸みのある果実味だが、瑞々しく繊細、そこにオーク樽由来のボリューム感がマッチし、完成度は極めて高い。まだ著名なワイン専門誌に取り上げられた事が少なく、まだまだ無名の存在ではあるが、すでに一部のマニアからは熱烈に支持を集めている。各キュヴェの生産本数も少ないこともあり、既に入手困難な状態である。近い将来世界的な注目を集めるのは想像に難くない。シャンパーニュ好きは要チェックの新世代の生産者。
【サブロン・エクストラ・ブリュット2020】
プルミエ・クリュのエキュイユとサシーの様々な区画のブドウ造られる。ピノ・ノワール80%、シャルドネ20%。軽やかな果実香は非常に洗練され、柑橘系にブリオッシュ香が優しくまとう。砂質土壌からなる果実味は柔らかな広がりを見せ、きめ細かでクリーミーなバランスが心地よい1本。
500Lオーク樽(新樽率0%)発酵、澱と共に11カ月熟成。アルコール度数12.5%。今回入荷のロットは2021年6月ボトリング。デゴルジュマン2025年3月。ドサージュ1.3g/L。
【試飲】
グラスに注ぐと繊細で奇麗な気泡が立ち上がっていく。熟した柑橘系果実、アプリコット、ハチミツの香りが漂う。ほのかな甘味を伴ったナチュラルな果実の旨味が口中に広がる、フレッシュな酸がそれを追いかけるように染み渡る。長いアフターにビターな味わいがアクセントになっている。旨味溢れるエレガントな果実味に隠し味のようにミネラルが骨格を支えている。これはちょっとヤバイタイプのシャンパーニュ。飲み疲れせずクイクイ杯を重ねてしまう美酒。下手したら一人で軽く1本空けてしまう。(2026年6月上旬試飲)




