エゴン・ミュラーやJ.J.プリュムと比肩するドイツを代表する造り手、マーカス・モリトール。ワインアドヴォケイトでドイツワイン史上初の3つのキュヴェが同時に100点を獲得。そして驚くべきことに2017年ヴィンテージは5つのキュヴェが同時に100点を獲得。2019年ヴィンテージも4つのキュヴェが同時に100点。その後も100点を獲得し、現在までに100点を21回獲得(2025年1月現在)している。リースリングで造られる白ワインは世界最上級の逸品と言って過言ではない。
【マーカス・モリトール】
マーカス・モリトールはモーゼル中部のヴェーレナー・クロスターベルクの地で8代続く家族経営のワイナリー。現当主マーカスは1984年、若干20歳という若さで両親からワイナリーを引き継いだ。彼は個々の畑のテロワールを生かし、長熟で個性溢れるリースリングの栽培に心血を注いだ。わずか4haであった畑は複数回にわたる拡張によって規模が拡大し、現在ではモーゼルで最大規模となる100haの畑を所有している。ほとんどの畑は最良の急斜面に位置し、ベルンカステラー・ドクトール、ヴェーレーナー・ゾンネンウーアー、ユルツィガー・ヴュルツガルテン、エルデナー・トレップヒェンといた超一級の銘醸畑を所有。白ワインは辛口、半甘口、甘口という3つの異なるスタイルに加え、赤ワインも造っている。そしてそのクオリティーは今やエゴン・ミュラーやJ.J.プリュムと比肩するドイツ最高のワイナリーとなっている。
マーカス・モリトールの輝かしい評価は枚挙にいとまがないが、主だった出来事を抜粋。
1984年:20歳でワイナリーを引き継ぐ。
1988年:モーゼルで初のピノ・ノワールを植樹した生産者の一人となる。
(注)ナチス政権時、この地域はドイツ品種であるリースリングの栽培が推奨され、ピノ・ノワールをはじめとする全てのフランス品種は排除するよう指示された。この制限は1980年代まで続いた。
1996年:「ツェルティンガー・ゾンネンウーアー・トロッケンベーレンアウスレーゼ**1994」がベルンカステリング・オークションで当時最高値の1000マルクを記録。
1999年:ゴー・ミヨ誌で「今年の流星」に選ばれる。
2003年:エクスレ度(331)において世界記録を破る。
(注)エクスレ度はドイツ特有の糖度を表示する方法。
2011年:ゴー・ミヨ誌で「ドイツ最高のカビネット」との評価を受ける。
2012年:「ヴェレナー・ゾンネンウーアー・トロッケンベーレンアウスレーゼ***2006」がベルンカステリング・オークションで2750ユーロの値を付け最高値を更新する。
2013年:ワインアドヴォケイト(2013年4月25日号)でヴェレナー・ゾンネンウーアー・アウスレーゼ***2011(ゴールド・キャプセル)が初の100点を獲得。
2015年:ワインアドヴォケイト(2015年2月28日号)で2013年ヴィンテージの3種類のアウスレーゼが同時に100点を獲得。同ヴィンテージのワインが3本同時というのはドイツの生産者としては初めての快挙。
☆ツェルティンガー・ゾンネンウーアー・Aus***2013(ゴールド・キャプセル)
☆ヴェレナー・ゾンネンウーアー・Aus***2013(ゴールド・キャプセル)
☆ユルツィガー・ヴュルツガルテン・Aus***2013(ゴールド・キャプセル)
2017年:ワインアドヴォケイト(2017年4月28日号)でツェルティンガー・ゾンネンウーアー・アウスレーゼ***2015(グリーン・キャプセル)が5つ目となる100点を獲得。
2018年:ワインアドヴォケイトの(2018年3月30日号)で2013年のトロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA)2本、2016年のベルンカステラー・ドクトール・アウスレーゼが100点を獲得。ちなみワインアドヴォケイトでは2013年ヴィンテージを赤、白合わせて44本テイスティングしており、5本が100点で残り全て90点以上の評価であった。
☆ツェルティンガー・ゾンネンウーアー・TBA***2013
☆ヴェレナー・ゾンネンウーアー・TBA***2013
☆ベルンカステラー・ドクトール・アウスレーゼ***2016(グリーン・キャプセル)
辛口、半甘口、甘口の全カテゴリーで100点を獲得したのはマーカス・モリトールのみである。
2019年:ワインアドヴォケイト(2019年6月22日号)で5つのキュヴェが同時に100点を獲得する快挙。
2020年:ワインワインアドヴォケイト(2020年10月23日号)で2つのキュヴェが同時に100点を獲得。2020年11月現在で100点を15回獲得している。
2021年:ワインワインアドヴォケイト(2021年6月11日号)で4つのキュヴェが同時に100点を獲得。2021年10月現在で100点を19回獲得している。
2022年:ワインワインアドヴォケイト(2022年8月26日号)で2つのキュヴェが同時に100点を獲得。2025年1月現在で100点を21回獲得している。
【栽培と醸造】
ブドウは樹齢100年に及ぶ接ぎ木をしていない古樹を所有し、その古樹からマッサル・セレクションを行っている。畑には熟練者を50人も雇って夏の間のキャノピー・マネジメント(栽培を管理するプロ)と2ヵ月に及ぶ収穫を行う。厳しい摘果、選果を区画ごとに行う。
醸造は培養酵母や添加剤、清澄剤を使わない伝統的な手法で、スタイルとヴィンテージによっては最長で2日間スキンコンタクトした後、垂直式の圧搾機でプレス。リースリングの多くは1000~3000Lの伝統的なオーク樽で発酵、熟成させる。
【*マークとキャプセルに関して】
ワイン名についている*マークは、フィネス(品質)によって分類されている。糖度(糖分が多ければ多いほど良い)ではない。リリース直前の最終テイスティングでマーカス自身によって決定される。
無印はスタンダード
*は良質
**は上級
***は最上級
味わいのタイプが分かるようにキャプセルの色を変えている。
ホワイト・キャプセル 辛口
グリーン・キャプセル 半甘口
ゴールド・キャプセル 甘口
【リースリング・ツェルティンガー・シュロスベルク・アウスレーゼ2020**ゴールド・キャプセル】
シュロスベルクはゾンネンウーアーに隣接する区画で、骨格のある酸とキリッとしたミネラルが特徴。グレープフルーツや青リンゴのアロマには砕いたスレート土壌のニュアンスが溶け込む。口に含むとみずみずしさがありながら洗練されており、凝縮した果実と僅かな塩味を伴う長いフィニッシュが印象的な1本。ステンレスタンクで澱と共に10カ月熟成。
傑作となった2020年のワインアドヴォケイト評を抜粋すると以下の通り。
「砕いたレモンの皮と濃縮されたリースリングの澄んだ風味豊かなブーケで始まる。口当たりは非常に繊細で純粋で、軽やかでありながら豊かで甘く、ピリッとした上質なアウスレーゼ。アフターには塩気と典型的なフルーツの香りが残る。すでに十分魅惑的だが、さらに熟成するポテンシャルを秘めている」今後半世紀近くの熟成が期待できるモンスターワイン。
★ワインアドヴォケイト 97点
飲み頃:2037~2080年
The 2020 Riesling Zeltinger Schlossberg Auslese ** (Golden Capsule) opens with a clear and savory bouquet of crushed lemon skins and concentrated Riesling berries. Highly delicate and pristine on the palate, this is a weightless but lush and sweet, zesty and very fine Auslese with salinity and typical fruit aromas on the finish. Already seductive but with even better aging potential. 7.5% stated alcohol. Natural cork. Tasted at the domaine from AP 139 22 in July 2022.(Wine Advocate Published: Aug 26, 2022)