ワイナリーの設立は1978年と比較的新しいが、イタリアワイン・ファンには説明不要のバローロを代表する名手、ルチアーノ・サンドローネ。1987年から実に25年に渡る丁寧な畑仕事と醸造実験の集大成として、ようやくリリースされたバローロ・ヴィテ・タリン。初ヴィンテージ2013年が6年の熟成を経て2019年にリリースされ、いきなりワインアドヴォケイトで100点を獲得した！
＊2023年1月5日ルチアーノ・サンドローネは死去した。享年76歳。現在は弟のルカ、娘のバーバラを中心に孫のアレッシアとステファノがワイナリーを継承している。​

【ルチアーノ・サンドローネ】
元々はマルケージ・ディ・バローロなどに勤めていたルチアーノ・サンドローネだが、カンヌビ・ボスキスの畑を購入するチャンスが突然訪れ、1978年に自らのワイナリーを設立した。80年代中頃から専門誌などで高い評価を得るようになり、現在の評価は周知の通り。
サンドローネは畑仕事に力を注ぎ、農薬などの人為的な処理や作業は最小限に抑え、有機肥料による自然農法でブドウの力を最大限に引き出す栽培を心掛けている。造り出される全てのワインは固有の土壌、ミクロクリマ、酵母を持つ個々のテロワール（区画）を見事に表現していると評されている。造られているワインは単一畑のバローロ・カンヌビ・ボスキス、４カ所の畑のブレンドで造るバローロ・レ・ヴィーニェ。そしてロエロ地区の樹齢の高いネッビオーロから造られるネッビオーロ・ダルバ・ヴァルマジオーレ。さらにバルベーラやドルチェットなどどれも傑出したワインを生んでいる。

【2017年ヴィンテージ】
2017年は温暖・乾燥の年で夜間の涼しい気温が夏の酷暑のブドウを救済した。穏やかな冬が早い発芽を促したが、4月中旬に異常な寒の戻りが起こり成長スピードが減速。開花時の寒さにより房の密度は低くなった。5～8月末までの暖かく乾燥した気候により生育が早まり、例年より早いヴェレゾン（果皮の変色）となった。9月に気温が下がり昼夜の寒暖差が生まれ、通常の生育サイクルに。この状況がネッビオーロやバルベーラのような成熟期間が長めの黒ブドウに、ただ暑いだけの年とは異なるフェノールの成熟をもたらした。近年の中でも最も早熟な年として記録されるだろう。大きな期待を持てるワインに仕上がり、ランゲの丘がいかにブドウ栽培に適しているかが証明された年でもあった。
 
【バローロ・ヴィテ・タリン】
この単一畑をルチアーノが初めて手にしたのは1987年だった。前所有者のニックネームがついた「タリン」と呼ばれる長い歴史のある区画で、大事に栽培されていたものをルチアーノが借りることになった。
 
畑作業を行う中で一本の変わったネッビオーロの樹を発見した。それはブドウの芽がとても小さく、房はふぞろい、粒の一つ一つは小さめ、青みがかった深いプラム色など、とても個性的だった。ルチアーノは注意深くその変わったブドウを観察し、このブドウの可能性を信じて、苗木を造り２区画に植樹した。
 
丁寧な畑作業でその変わったブドウは順調に生育していった。ある程度の収量になり毎年実験的に醸造を繰り返した。年を重ねるにつれ次第にこのブドウが並外れたストラクチャーを備えた品種というのが分かった。果たしてこのブドウがネッビオーロであるかどうか、トリノ大学にDNA分析を依頼した。その結果、ルチアーノの信じた通り最高品質のネッビオーロと判定され、バローロとしてリリースすることが出来ることになった。
 
1987年から実に25年に渡る丁寧な畑仕事と醸造実験の集大成として、ようやく「ヴィテ・タリン」の初ヴィンテージ2013年が6年の熟成を経て2019年にリリースされた。そしていきなりワインアドヴォケイトで100点を獲得し鮮烈なデビューとなった。ちなみにルチアーノ・サンドローネがワインアドヴォケイトで100点を獲得したのはこれが初めてである。

【醸造】
醸造は100％除梗。マセレーション後、50hlの直立型木製樽にて天然酵母により発酵。20～35日間のマセラシオン期間中にヴィンテージによっては果帽を沈める為のフタを使用。マセラシオン後、最初の澱引きをし、ステンレスタンクで一週間落ち着かせた後、再度澱引きをして、500Lのフレンチオークでマロラティック発酵と2年間の熟成。タンニンのストラクチャーがしっかりとしているので新樽比率は50%以上。澱引き後、大きな楕円のフレンチオーク樽で1年熟成させ瓶詰。その後さらに3年熟成。収穫から6年を経てリリースされる。生産本数2200本。
 
仕上がったワインは上品でリッチ。長い熟成を経た欠点のないガーネット・レッドでフローラルや果実、スパイスのニュアンスを備えた複雑なアロマが重なり合い広がる。しっかりとしたタンニンとストラクチャーでパワフルな、長期熟成が約束されたワインである。(ギフトボックス入）
 
5thヴインテージとなる2017年は傑出した仕上がりとなった。ヴィノスでは「2017年のバローロ・ヴィテ・タリンは本当に驚くべきワインです。異次元のレベルのワイン。素晴らしい」と絶賛し100点の評価となった。日本への入荷は50本前後だという。
 
飲み頃：2025～2050年（ルチアーノ・サンドローネ）

★ワインアドヴォケイト　97点＋
飲み頃：2025～2055年
This wine is made with a new clone of Nebbiolo that was identified by the Sandrone family. The 2017 Barolo Vite Talin now occupies the top position in the family portfolio. It represents 30 years of work by Luciano Sandrone, who started his career as cellar master at Marchesi di Barolo. I am told that Nebbiolo is recognized by seven DNA indicators, and Talin (the clone is named after the old farmer who found the first vine) has all seven. Today, the Sandrone family has propagated the clone and is cleaning it from viruses to see how it behaves in the future. Alessia Sandrone is in charge of this process. They notice that berry size is half that of normal Nebbiolo, and the wine is consequently more concentrated and dense. This hot vintage delivers lots of extra power and fruit weight with pressed blackberry, earth, tobacco, clay, autumnal leaf, iodine and candied orange. (Wine Advocate Published: Aug 25, 2023）
 
★ワインスペクテーター　95点
飲み頃：2026～2045年
A fiercely tannic red highlighted by black cherry, blackberry, plum, tar, eucalyptus and amaro aromas and flavors. Delivers a granular texture along with generous concentrated fruit, yet the tannins become better integrated on the finish. Best from 2026 through 2045. (Wine Spectator Issue Dec 31,2023）
 
★ヴィノス　100点
飲み頃：2027～2047年
The 2017 Barolo Vite Talin is a total stunner. Dark, rich and sensual, the Vite Talin captures all of the natural richness of the heavily virused, low-yielding clone the Sandrone family propagated in their parcels within Le Coste and Rivasi, both in Barolo. Super-ripe dark cherry, plum, spice, cedar, tobacco and kirsch are all dialed up in this explosive, heady Barolo. The 2017 is just next- level wine. Superb.（By Antonia Gallani on November 2022）