【グラーチ】
昔はシチリアのワインと言えば真っ先に浮かぶのはマルサラ(酒精強化ワイン)だったが、今やシチリアで最も注目を集めているのはエトナだろう。2000年以降、新しい造り手が次々と頭角を現し注目を集めた。今までのエトナとは一線を画すモダンでエレガントなワインは「地中海のブルゴーニュ」として人気、評価とも急上昇していった。そのエトナ・ワインの第3世代として注目されている一人がグラーチである。
現当主のアルベルト・グラーチはミラノの投資銀行で働いていたが、祖父の死を機にシチリアの実家に戻り畑を相続した。祖父の畑は質より量を重視した一般的なシチリアの栽培農家だった。アルベルトは相続した畑を売却し、エトナに新たな畑を購入した。
アルベルトの好むワインはジュゼッペ・マスカレッロやジャコモ・コンテルノのバローロ。「規律の中に厳格さがある。妖艶さ、純粋さがあって野蛮さはない。そんなワインを造りたい」とエトナを選んだ。畑はエトナの北斜面に位置し、エトナで最も注目を集めているパッソピシャーロ地区。2004年に購入した畑は標高660~700メートルのアルクリアと標高1000メートルを越えるバルバベッキの2つ。以前の所有者がケチだったお陰で一切農薬が使われてなかったという。アルクリアは25haの敷地の内15haがブドウ畑でネレッロ・マスカレーゼが90%。残りの敷地にはネレッロ・カプッチョとカタラット、カリカンテが植えられている。バルバベッキは標高が高いためフィロキセラに侵されていない。よってほとんどのブドウ樹が自根である。
エトナの個性を表現するワインを造るにはエトナの自然を守ること。よって除草剤や農薬を一切使用しない。更に土地の個性を表すには樹齢が高くなければいけないが、幸い購入した畑には古樹が多く残っていた。古樹は収量が自然と減り、1つの樹には3~4 房しか収穫できないが密度の濃いブドウを収穫できている。醸造はシンプルで区画ごとにセメントタンクで発酵。自然酵母を使用し、発酵後はオーストリアのストッキンガー製の大樽で熟成する。清澄せず、ノンフィルターでビン詰め。
そんなグラーチのワインをロマネ・コンティのオーナー、オベール・ド・ヴィレーヌはワイナリーを訪問し称賛。英国ワイン評論家の重鎮シャンシス・ロビンソンも「グラーチは若い造り手だが注目に値する。彼のワインはバローロ、バルバレスコ、もしくはブルゴーニュのようだ」と賞賛した。シャンシス・ロビンソンが評したようにネレッロ・マスカレーゼで造られる赤ワインはまさに地中海のブルゴーニュ。ブラインドで飲んだら上質なブルゴーニュワインと間違えるほどエレガントな旨味に満ちている。
【エトナ・ビアンコ・アルクリア】
アルクリアのカリカンテ100%で造られる。畑は黒色火山岩が風化した土壌でミネラルが強く、水はけが特に良い。収穫は10月末まで待って行われ、発酵はセメントタンクと大樽の併用で自然酵母のみで行われる。その後、移し変えて澱と共にコンクリートタンク50%、大樽50%で12カ月熟成。エトナのカリカンテを代表する1本。
この2019年は「世界クラスのカリカンテの最高峰」とヴィノスで称賛されたほど。
「リッチでありながら純粋なミネラルと風味豊かな2019年のアルクリアは、何度もグラスに傾けたくなる味わい。白い花、火打ち石、桃の皮、砕いたアーモンド、スモークの香りが感じられる。柔らかくしなやかな刺激的な酸味と塩気のバランスが取れており、酸味のある果実味とほのかなスパイスがロ中に広がる。セラーで熟成させればさらに進化するのは分かっているのだが、今、飲むのが止まらない。これは世界クラスのカリカンテの最高峰です」
★ヴィノス 94点
飲み頃:2022~2027年
Rich yet purely mineral and savory in style, the 2019 Etna Bianco Arcuria keeps you coming back to the glass. White flowers, flint, peach skins, crushed almonds and smoke can all be found. It's soft-textured and pliant, balanced by stimulating acids with a salty twang, as tart orchard fruits and hints of spice cascade across the palate. The cheek-puckering finale leaves you thirsty for more, even as the Arcuria displays enough structure to evolve further with time in the cellar. This is world-class Carricante at its best.(By Eric Guido on June 2021)