現代派バローロの歴史を語る時、欠かすことの出来ない人物がエリオ・アルターレ。伝統的なバローロの醸造法にバリックを導入し、バローロに革命をもたらしたと言っても過言ではないだろう。まさにバローロ・ボーイズの教祖的存在。
【エリオ・アルターレ】
17歳から父のワイン造りを手伝い始めたエリオ・アルターレ。しかし70年代に入って、バローロのワインは全く売れない危機的状況になっていた。そこで彼は、同じ家族経営の小さな生産者なのにバローロより何倍も高値で取引されているブルゴーニュワインに注目した。1976年、エリオ・アルターレはブルゴーニュに向かった。
そこで彼が見たものはバリック(小樽)を使った醸造法だった。当時のバローロは伝統的な大樽での醸造が一般的で、長熟であるがタンニンが強く、飲み頃になるまでに時間がかかった。バリックを使うことによって、タンニンが強すぎず、まろやかにさせることが出来る。さらに低収量によってブドウの質をアップすること、果皮のマセラシオンを短くすることで、長熟でありながら、早い時期からも楽しめるエレガントでモダンな現代派バローロへと変身させた。
ただそこに至るまでの過程は、一筋縄ではいかなかった。伝統的な醸造法にこだわる父親と衝突し、エリオは一切畑を相続させてもらえなかった。現在の畑は相続した姉妹から後に買い取ったものだという。そんな様々な試練を経て造り上げられた彼のワインは早くから楽しめて、比類ない質の高さと深み、そして美しさを持っている。エレガントで完璧なまでのバランスを備えた美酒は、ブルゴーニュの偉大なグランクリュを想起させる。まさにフィネス溢れる一献。
【ランゲ・ロッソ・ラリジ】
現在ランゲ・ロッソはネッビオーロ以外にバルベーラ、シラー、ピノ・ノワール、メルロー、ドルチェット、カベルネなどの使用が許可されている。エリオ・アルターレは3種類のランゲ・ロッソを造っているが、全て新樽100%で熟成され、ブドウは全てラ・モッラ村のアルボリーナの畑である。
ラリジはバルベーラ100%で造られるキュヴェ。ラ・モッラ村にあるアルボリーナの一番いい区画にバルベーラが植えられており、そこがラリジと呼ばれていた。エリオ曰く「実は昔から一番良い場所には少しバルベーラが植えられていた。自分達で一番美味しいワインを飲むためのプライベート用の区画だったのさ」と。
通常のバルベーラ・ダルバも造っているが、決定的な違いは古樹を使用し、新樽100%で造ること。使われるブドウは1948年に植樹された樹齢80年以上の古樹のみ。新樽率100%のバリックで18カ月熟成させる。このワインは1982年にジャコモ・ブライダと共にバリックによるバルベーラの可能性を模索し始めたのがきっかけだった。バルベーラはバリックとの相性が非常に良い品種の1つと分かったからだ。ラリジはバルベーラだが、ラリジであってバルベーラ・ダルバではないという挑戦でもあった。そしてその試みは見事に成功した。エレガントでありながら深遠な果実味は古樹ならではの美味。イタリアで何千種類ものバルベーラのワインが造られていると思うが、間違いなく最高峰に位置する一つであろう。今すぐ飲んでも楽しめるが、今後の熟成も期待できる逸品。
しかし残念なことにファヴェシェンツァ・ドラ―タ(ファイトプラズマによる病害、一度罹ると抜くしかない)がラリジ畑のバルベーラに深刻な被害をもたらしたため、2025年の収穫後、この樹齢80年の古樹を伐採する決断を下した。来春にはバルベーラを再植樹する予定。2025年ヴィンテージを最後にしばらくはこのキュヴェが生産されない可能性がある。
傑作となった2021年のヴィノス評は以下の通り。
「2021年のラリジは上品でエレガント、そして非常に洗練されている。シルキーなタンニンが、レッドチェリー、プラムの果実味を包みこんでいる。スパイス、新革、杉、ブラッドオレンジの香りが溶け合います。2021年は私がここで試飲したラリジの中でも、最も洗練されたワインの一つです。果実味の純粋さに圧倒されます」
★ヴィノス 95点
飲み頃:2025~2041年
The 2021 Larigi is classy, elegant and super-polished. Silky tannins wrap around a core of red cherry/plum fruit. Spice, new leather, cedar and blood orange all meld together. The 2021 is one of the more refined, medium-bodied Larigis I have tasted here. The purity of the fruit is compelling.(By Antonio Galloni on November 2023)




